上司と部下写真はイメージです Photo:PIXTA

「強制と忍耐」といった根性論が蔓延っていた昔と違い、現在の会社は部下を育てるにあたり「肯定と承認」が重視される時代となっている。怒らずに叱らずに、若手部下にやる気になってもらうにはどうしたらいいか、若手社員育成専門コンサルが説く。※本稿は、伊藤誠一郎『部下に「困ったら何でも言ってね」はNGです 若手社員は「肯定」と「言語化」で自ら動き出す』(日本実業出版社)の一部を抜粋・編集したものです。

「強制と忍耐」は影を潜め
「肯定と承認」が重視される時代に

 人の教育や指導に関して、これまでは「強制と忍耐」が幅を利かせていた時代もありました。

 中学、高校時代の部活動が典型です。指導者は、指導される者に対して選択の余地を与えず、発言することも許さずにやるべきメニューを半ば強制的に与えました。そして「このつらさに耐えろ!乗り越えろ!そうすればもっと強くなれる!」という観念のもと、厳しい訓練が繰り返されました。

 企業においても「強制と忍耐」の文化が横行していました。

 高圧的な講師がひたすら社員を罵倒し続けたり、社員に大声で絶叫させたり泣かせたりする研修が行われていた時代がありました。

 また、まだ仕事が終わらない上司や先輩がいるうちは、若手が帰りづらい雰囲気を醸し出す職場環境というのも部活動の連帯責任と同じような発想でありました。

 当時は、このように指導者の非合理的で主観的で一方的な、いわば「理不尽な指導」に対して、指導される側は黙って従うしかありませんでした。肝心なのは、その結果、「本当に強くなれたのか」ということです。

 その反省からか、徐々に「強制と忍耐」の考え方は影を潜めるようになり、最近は正反対の「肯定と承認」が重視される時代へと変化しました。

 若手社員はそうした時代背景のもとで育ってきたことを上司世代はしっかり認識して、指導への意識と方法を切り替えなければなりません。しかし、いまだにその切り替えができていない組織や人が存在しています。

 ここで押さえておくべき点は、人の成長にとっては「肯定と承認」のほうが、効果的であって、メリットが大きいから変わらなければならないということです。人は自分自身を肯定され承認されると能動的に目標を立て、その達成のために自発的に行動するようになるからです。

 つまり、時代が変わったから意識を切り替えるという以上に、本来の教育指導のあり方を正しく理解して実行するのです。

 この点が理解できていない人ほど、変化が求められていることに対して「今の時代はそれじゃ許されないから」「今の若者にはそれじゃ通用しないから」と言います。