そのためには「この仕事で求められている水準」「この仕事の本来あるべき完成のイメージ」を具体的に示すことからはじめます。ここでのポイントは、落ち着いて感情をフラットに「説明」することです。
そして若手社員の仕事の完成度に対して、何がどれぐらい足りなかったのかをはっきりと伝えるようにします。また、その至らなさによってお客様や取引先、他部署、ほかの社員にどのような悪影響が生じてしまうのか、ひいては会社全体にどれだけの損害を与えることになるのかも明確に伝えます。若手が1人の社員として果たすべき仕事に対して、先輩や上司は妥協すべきではありません。
これを実践するためには、上司や先輩は「仕事の水準」や「完成のイメージ」と合わせて、「仕事の目的や意義」「1人の仕事が与える影響」について具体的に伝えられるだけのボキャブラリーと説明力も問われます。
ミスや失敗に伴う悪影響についても「不満が出る」「クレームになる」「評判が落ちる」といった大雑把な表現ではなく、「誰にどれほどの弊害が生じるのか」を具体的に説明するのです。
教えるときには、具体的かつ丁寧に
突き放してはいけない
そして、次のステップは「教える」です。
ここで「自分で考えろ!」「周りの先輩を見て盗め!」と突き放してはいけません。
伊藤誠一郎 著
若手の至らない点が明確になったのですから、仕事が完成したイメージとの差をどのようにして埋めていけばいいのかを1つひとつ丁寧に教えていきます。
まさに上司、先輩として豊富な知識と経験を活かす場となりますから、これまでのキャリアで培ってきたノウハウを惜しみなく提供してください。
また、教わった内容をメモして記録に残す大切さも若手に教えます。記録することによって、TO DOにつなげるのはもちろん、「言った、言わない」を防ぐことができるのは、すべての仕事に共通する大事なポイントです。
昔は上司や先輩は指導を通して、若手に仕事の厳しさを伝えていたかもしれませんが、今の若手社員は「何を」「どうするか」がわかれば、自ら動く人も少なくないので、必要以上の厳しさはいりません。何より若手が仕事を覚え、成長していくことがゴールなのですから。