この本にはどんな内容が書かれているのか

 倫理というと、学生時代に習った難解な学問のように思ってしまうかもしれませんが、どう行動するかを考えるための基本を議論し、対話するための重要な考え方です。デジタルに代表される技術を社会でどう使っていくかはルールや倫理によって成り立っており、技術のことを知るだけではなく、倫理を知ってもらうことにより、社会に浸透しつつあるデジタル技術とよりうまく付き合う方法を考えてもらいたいというのが本書の主題です。

 最近、生成AIが流行りではありますが、生成AIというような狭い枠でデジタルトランスフォーメーション(DX)を捉えるのではなく、技術と倫理という枠で、より広く社会を捉えて、社会全体のDXの流れを理解した方がよいと思っています。

 本書には、AIやデータ利活用全般を意識して、どのようなフレームワークがあるか、どのような具体的な事例があるか、それに対してどのように考えているかを中心に書いています。世界の有識者の考え方を含め、いろいろな方の考えを載せましたので、今後、デジタル技術を活用したいと考えている方にも参考になると思います。

 まだ考えが不十分で、もっと別の考えの方がよいと思われる部分もあるかもしれません。実はそのように考えてもらえたら本書は成功です。まさに、デジタルとエシックスを考え始めたことになるからです。

 第1章は、日本社会が置かれた現状について書きました。世界のランキングを見れば、かなり難しい状況ではありますが、エシックスに基づく対話を始めることにより、より社会が変わっていくきっかけとなるかもしれないと思っています。

 第2章には、デジタル倫理の基本を書きました。まず倫理とは何かというところから始めて、倫理の3つの考え方、デジタル倫理の歴史を書いています。

 第3章と第4章は、社会のデジタル化が進んだ国であるデンマークについて書きました。デンマークは世界競争力ランキング1位の国です。もちろん、デンマークが全て素晴らしく日本は遅れていると言いたいわけではなく、デンマークにおけるデジタル化の歴史やサービス、現在の取り組みを、日本のDXの参考にしたいという意図です。

 第5章は、著者らの所属するNECにおける日本の事例を中心に書きました。日本では、デジタルエシックスの実社会における適用は始まったばかりです。私たちもどう考えるべきか、苦労しながら取り組んでおり、その過程を紹介したいと思います。

 第6章は、第3章で紹介するデンマークのデジタルエシックスのフレームワーク以外の、これからエシックスを社会実装していく上で役立てられるフレームワークについて書きました。

 第7章では、今後の社会に向けて、キーとなる観点や、日本社会への提言をまとめました。著者である我々も今後、“Truly Open, Truly Trusted”な社会の実現に向けて、その一員としてしっかり取り組んでいこうと考えています。

 最後に、本書の付録として、世界のAIのガイドラインをまとめました。法やルールとエシックスは表裏一体です。この分野に興味を持たれている方、また企業活動をする上で法やルールについて全般的な知識を得たいという方にお薦めです。

 本書が日本のDXを進めるきっかけの一つになれば幸いです。ぜひ、お読みください!

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