それでも社員がやる気や企業への帰属意識を維持できていたのは、会社の業績が多少悪化しても、担当していた仕事が必要でなくなっても、その企業に勤務し続けられるだろうという安心感があったからでした。
しかし人員削減が企業延命の手段として当たり前になってしまった結果、社員はもはや「会社は私を庇護してくれる。たやすく解雇したりしない」という信頼感や依存心を抱けなくなってしまいました。それどころかいつか人員削減の対象になってしまうかもしれないという不安を抱きつつ働かなければならなくなりました。
そんな社員にとって、会社の都合で配置換えさせられる「メンバーシップ型雇用」はもはや割に合いません。意にそわない異動を受け入れ、どうしても好きになれない仕事を我慢して続けていても、海外に単身赴任し、慣れない環境に悪戦苦闘していても、会社は庇護してくれないかもしれないからです。
終身雇用というつっかえ棒が利かなくなったその時から、職務内容や勤務地、勤務時間などを限定しない「メンバーシップ型雇用」は、社員にとって異動や転勤、出向を「無理強い」される不平等な雇用契約に変貌してしまったのです。