フジテレビ側の「ここ数年『テレビより他メディアの方が面白い』と言われ続けているのが悔しく、『結局テレビが一番面白い』と思ってもらえるコンテンツを作りたいと考えている」というコメントからは、ネット動画などへのライバル心が垣間見える。こういった焦りが、「自分たちはコンプライアンスに過剰に縛られてやりづらい」という発想につながるのかもしれない。
「他者をおもんばかる力」
のズレを指摘する委員も
念のため、委員たちからはこれ以外の意見もあったことを紹介する。ざっと見た限り、ネット上で肯定的に受け止められていた彼らの意見は次のようなものだ。
・何より大事なのは子どもたちがより良い未来を手にするために、大人が人権の概念をアップデートさせていくこと。
・テレビは勝ち組の集まりだった。弱者の視点や他者をおもんぱかる力が無意識の内にずれてくる。一人一人が弱者に寄り添う人生観を持つことが港社長の言う“愛”なのでは。
・視聴者、出演者、取材対象者だけでなく、テレビの番組制作に携わる人々の人権にも目を向けてほしい。自身の人権を守られていないスタッフが、テレビの向こうの人の人権に敏感になれるはずがない。
・関東大震災では誤報が人々の思想を先導し、誤った思想に基づいて大勢の命が奪われたという悲惨な過去がある。その過去は絶対忘れてはならない。テレビ報道はSNSがどうであろうと、真実しか放送しないということを固く守ってもらいたい。
最後に紹介した意見は、東海テレビが別人の顔写真使用した問題についてではないだろうか。
「大人が人権の概念をアップデート」は前述の通り、その通りであると思う。
テレビが「勝ち組の集まり」であるのもその通りで、かつて就職活動でテレビ局の倍率はとても高かったし、タレントでもテレビに出る人は「勝ち組」である。彼らの視点を重視すれば、自然と中心点がズレてくるという指摘は重要である。