合格通知書写真はイメージです Photo:PIXTA

日本で働く労働者の平均年収は約458万円だという。それと比べれば年収1000万円世帯は輝いて見える存在だが、実際のところ彼らの子育ては楽ではない。都内では区によっては小学生の2人に1人が私立中学を受験する昨今だが、受験戦争を勝ち抜くためには、1000万円の年収では、ままならない現実が待ち受けている。※本稿は、加藤梨里『世帯年収1000万円 「勝ち組家庭」の残酷な真実』(新潮新書)の一部を抜粋・編集したものです。

難関私立大学はより狭き門に
公立中では大学受験に間に合わない

 首都圏模試センターによると、2023年の中学受験者数は首都圏合計で5万2600人で、この少子化時代にあっても受験者数が増え続けています。中学の入学定員に対して志望者が増加しているため、全体の合格率は年々低下し、難関校を中心にますます狭き門となっています。

 東京23区では小学生のうち私立中学校に進学する子どもの割合は19.4%です。国立・都立一貫校に進学した子どもや受験はしたものの公立中学に進学した子どもを含めると、受験率はもっと高いはずです。特に教育熱心な世帯が集まる東京都心部の文京区(49%)や港区(41.5%)では、半数近い割合の子どもが私立中学に進学しています。こうした地域では、難関中学が入学試験を行う2月1日には6年生の教室が欠席者だらけという話もままあります。

 なぜ、ここまで中学受験を選択する親子が増えたのでしょうか。人によって理由は様々ですが、大学受験の難化により、高校3年間では受験対策が間に合わないという考えや、高校受験を避けて中高6年間は部活などにじっくり取り組めるようにしてあげたい、という考えなどがあるようです。

 少子化の影響で定員割れする大学が出てくる一方で、人気の難関大学の競争は激化しています。いわゆる早慶上理(早稲田、慶應、上智、東京理科)をはじめとした難関私立大学では、かつては国立大学に合格者が流れることを見越して合格者数を定員よりも多めに出してきましたが、国は大学に対して定員管理の厳格化を求め、定員を大幅に超える入学者を受け入れた大学には助成金を交付しないなどの措置を取っています。そのため私立大学の一部は2016年以降、合格者数を絞り、合格率が下がってきています。

 2021年からはセンター試験に代わり大学入学共通テストが導入されるなど、大規模な入試改革が行われています。知識を暗記していれば解ける問題から、思考力や判断力、表現力が問われる問題に方向転換されました。また各大学が行う個々の入学試験でも、知識に加えて思考力や判断力、主体性を評価する選抜方法に変わりつつあります。