今の中学受験で必要な勉強量は膨大で、親世代が中学受験経験者であっても当時の3倍などともいわれます。難関校でなくても、特に算数では大人でも対策をしていなければ手も足も出ないような難問も出題されるため、進度の早い塾では5年生までに6年分の学習を済ませ、6年生ではひたすら問題演習と過去問に取り組みます。

 一問の正答の差が合否に直結することもあるため、ぬかりなく勉強するために6年生では志望校別コースや弱点克服コース、日曜特訓や正月特訓、塾によっては合宿もあり、その都度別途費用がかかります。加えて、授業内容が難しくついていけなかったり、志望校の偏差値に成績が届かない場合は、1時間あたり5000円~1万円程度かかる個別指導塾や家庭教師で補うこともあります。週1回1時間ずつでも月に2~4万円、直前期に連日数時間利用すれば数十万円になることもあります。受験本番までにかかる費用は標準的には3年間で200万円が目安といわれますが、その半分以上は6年生時の1年間での出費です。

お金以外でも
親のサポートが必要に

 見過ごせないのが経済面以外での親の負担です。塾への送迎、家庭学習への伴走、志望校選びや説明会への参加、出願手続き、試験会場の下見や本番当日の送迎、併願校選び、受験前後の子どもの精神的なケアなど、親の献身的なサポート、そして戦略とフットワークなくして、小学生の子どもが中学受験を乗り切ることは難しいといわれます。

 受験戦争の激化につれ、1人の受験生が受験する入学試験の数と受験料の負担も増加傾向にあります。2023年の中学受験生1人あたりの受験校数は平均6.92校です。私立中学の入学試験の受験料は都内平均で2万3897円で、7校受験すれば総額17万円近くなります。

 併願校と第一志望校の受験・合格日程次第では、滑り止めの学校へ入学金を納めることもあります。平均で約26万円という私立中学の入学金は結果的に別の学校に進学することになっても戻ってこないことが多いのですが、決して気軽に手放せる金額とは言えません。これらを合計すると、中学受験にかかる費用の総額は300万円を超えてもおかしくありません。

 受験でさんざんお金を使っても、そこは始まりに過ぎません。