「面白い大人とクソつまらない大人にはたった1つの差があります」
そう語るのは、これまでX(旧Twitter)上で8年間365日、毎日欠かさず大喜利のお題を出題し、累計で200万以上の回答を見てきた「坊主」氏だ。「IPPONグランプリ」「笑点」などの芸人さんが活躍する場がある一方、「ネット大喜利」「ケータイ大喜利」「ラジオのネタメール」など、一般の人にも大喜利に参加できる場は増え、いまや空前の「大喜利ブーム」である。
〈お題〉
「クリスマスを一人で過ごす、せつない言い訳は?」
最優秀賞
「うちの地元、まだキリスト教が伝来してないんだ」
〈お題〉
「なぜ静岡に新幹線の『のぞみ』が止まらないのか?」
最優秀賞
「スルーが(駿河)基本だから」
このように、大喜利のように「斜め上の発想を出す」というスキルは、「面接での一言」「LINEでのうまい返し」「意中の相手を口説く言葉」「新企画のアイデア」などに使える“万能スキル”でもあるのだ。
そんな大喜利について、世界で初めて思考法をまとめた話題の著書『大喜利の考え方』では、「どうすれば面白い発想が出てくるのか」「どんな角度で物事を見ればいいのか」などを超わかりやすく伝えてくれている。まさに「面白い人の頭の中」が丸わかり。そこで、この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、大喜利的な思考法を詳しく解説する。(構成/種岡 健)
大喜利は素晴らしい
大喜利とは、出された「お題」に対して、機転の利いた「回答」を出すものです。
私は、「2ちゃんねる」が好きでした。
そこには、面白い書き込みがたくさんありました。
その中でも、
「ガンジーでも助走つけて殴るレベル」
という表現が、特に私は好きでした。
「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう」というのは、アンディ・ウォーホルの有名な言葉ですが、匿名のネット社会では、それがより顕著に現れるんですよね。
そもそも大喜利の世界は、芸人さんのものでした。
お客さんの前で、出されたお題に対して、当意即妙な回答を一言で返す。
その芸を見るものでした。
しかし、見ているお客さんの中には、「自分のほうが面白い回答を思いついた」という人もいたはずです。
「笑点」を見ながら、テレビの前で面白い回答を言う人が、日本全国、何人かはいたでしょう。
そんな才能が埋もれてしまっていたのです。
ネットの登場により、そんな回答が日の目を見ることになりました。
2ちゃんねるの掲示板では、匿名でのひとつの書き込みが定型文のように一人歩きします。
「誰が言うか」より、「何を言うか」が問われます。
シンプルな面白さだけで判断されて、それが「ネタ化」するんですよね。
大喜利と承認欲求
昨今では、人工知能(AI)の発達が世間を賑わせています。
人間からの質問に素早く「回答」を出すのを、AIは得意としています。
ただし、ここでの回答は、「最適なもの」であるだけです。
「1+1は?」という質問に、「2」という回答を出すだけの役割です。
しかし、小学生の頃に、「1+1は田んぼの『田』(1+1=で田と書ける)」ということが流行ったはずです。
これは人間的な発想ですよね。
一度聞いたらネタ化しますが、最初に思いついた人は賞賛を浴びたことでしょう。
そういう意味では、大喜利こそが、じつは人間に残された「最後にできること」だとは考えられないでしょうか。
お題があると、つい答えたくなるものです。
ラジオのハガキ職人は、パーソナリティーに読まれることにエネルギーを注いでいます。彼らは、プロの芸人を笑わせるネタをせっせとつくっています。
さらにネットが誕生して以降、2ちゃんねるや旧ツイッターが誕生し、大喜利が手軽に開催されるようになり、一気に市民権を得ました。
テレビ番組でも、「ケータイ大喜利」などの視聴者参加番組が人気になりました。
人助けと同じで、いざ目の前に困っている人がいると、「目的」なんて必要ありません。
山登りを極める人も、「そこに山があるから登る」というだけです。
退屈な大人になってしまうよ
「当たり前のことしか言わない」
「誰でも言えることしか言わない」
そんな大人に、あなたはなりたかったでしょうか。
「いや、子どもの頃のように柔軟な考え方を保っていたい!」
誰しもがそう考えたのではないでしょうか。空を見上げて、
「あ、恐竜だ!」
と指差す子どもに、
「いや、あれはただの雲だよ」
と返す。なんて、くそつまらない回答でしょう。
そんなものは、先ほども書いたように人工知能がやればいいんです。
人間「あの空の物体は何?」
AI「雲です。水蒸気でできています」
そんな当たり前の返しではなく、
「たしかにあれは恐竜だね。絶滅したことを忘れ去らないように、神様が空に浮かべてくれたんだろうね」
と、返したほうが楽しい。
これぞ「人間の営みだな」と、あなたは感じませんか。
面接の場でも、営業トークでも、結婚式のスピーチでも同じです。
誰でも言えることを言っても、印象には残りません。
ちょっと違う角度から回答をするから、「あの人は面白い」と思われるのです。
そういう大人であり続けるためにも、大喜利はうってつけなのです。
(本稿は、『大喜利の考え方』から一部抜粋した内容です。)
日本一の大喜利アカウント
X(旧Twitter)は、2024年1月現在で190万フォロワーを突破。元々、「2ちゃんねる」が大好きで、「匿名で面白い回答をする人がたくさんいる!」ということに衝撃を受け、Xでお題を出し続ける。これまで8年間365日、毎日欠かさず大喜利のお題を出題。累計で2万以上のお題を出し、数百万以上の回答を見てきた。昼は僧侶として働く、正真正銘の「お坊さん」でもある。また、都内に「虚無僧バー」「スジャータ」というBARを2軒経営しており、誰でも1日店長ができる店として、さまざまな有名人やインフルエンサーなどに店長を任せている。BARの名前の由来も仏教からとられている。『大喜利の考え方』(ダイヤモンド社)が初の著書。