1989年に入国管理法が改正された際には、「定住者」という区分ができました。これは日系人対象の在留資格で、制限なく働くことができます。かつて南米に移民していった人たちの子孫が、この「定住者」という形で、人手不足になったメーカーの日本の工場で多く働いていました。

 次に2009年の入国管理法改正で新設された「技能実習」は、日本の職場で技能を学び、それを本国に持ち帰って仕事に活かしてもらうという建前の制度です。日本への定住は目的ではないので、「移民ではない」ということになっています。

 ベトナムなどの東南アジアから多くの若者がこの資格で来日し、今も多くの工場で戦力として役に立っています。定住目的ではないので、技能実習生の就労期間は最長5年です。技能を学ぶためのものですから、対象となる職種には制限があり、期間中に仕事は変えることは原則不可能です。

 この技能実習生は人手不足への対策として非常に有効だったのですが、雇用者側から見ると5年で帰ってしまうことが問題でした。そこで2019年に新設されたのが「特定技能」という制度です。これも職種に制限があり、在留期間は最長5年です(技能実習生から移行すれば計10年いられます)。

移民によって治安が悪化し
日本の文化と伝統が失われる?

 2020年6月末の時点で、日本には約290万人の外国人が在留資格を持っています。内訳を見てみると、「技能実習」や「定住者」など、労働力として期待はしているが、移民ではないという建前の人たちが4分の1程度います。さすがに「技能実習」の名目で「労働力」を確保するのはおかしいということで、「労働力」確保のための制度に衣替えするという検討が2023年に始まった。

 移民が増えるということは、日本で生活する人が増えるということですから、実質的な人口増加ですし、それによる内需拡大の効果もあるはずです。しかし日本では、移民を増やす代わりに、「インバウンド外国人旅行者」を増やすことが優先され、それで需要を増やそうとしてきました。

 すでに実態として100万人規模で労働力を日本に招いているのですから、制度もそれに合わせていくべきでしょう。