なぜ移民に関する議論を今まで政府が避けてきたのかというと、与党の支持層の中には、「移民が増えると日本の文化や伝統が失われる」というような抽象的な反対理由の人がいるからのようです。

 社会の治安が悪化するという懸念を持つ人もいそうですが、それは正式な移民を受け入れないせいで、不正に定住して定職につけない人が増えるからです。

 日本人の雇用が奪われるから、というのは、人口減少時代にはもはや理由になっていません。長期的には、外国人を正式に雇用し、正式に納税してもらい、社会が多様性を受け入れるようになることが求められるはずです。

移民問題が続いていくなかでの
ビジネスチャンスとは

 所得格差が当分は残るとするならば、移民問題も、まだ続くと想定すべきです。こうした人口移動に伴う課題が様々に発生するのですから、これらを解決することで大きなビジネスチャンスになります。

 人口移動関連のビジネスチャンスとしては、以下のような論点を考えることができます。

(1)移民の受け入れ国は、単純労働を必要としているのだが、そもそもその労働を自動化することで、移民の人数を少なくすることは可能ではないのか

(2)移民した本人は単純労働者かもしれないが、その子供はよい教育を受けて、より高い収入を得られる機会が得られるべきであり、そのような教育システムを導入すべきではないか

(3)移民の子供世代は、複数の言語、複数の国の文化を理解できるため、「将来のグローバル人材」の有望な候補であり、企業が積極的に採用し、育成していけば、貴重な戦力になるのではないか

(4)エスニック・コミュニティは異文化体験のできる観光資源になりつつあるので、より積極的に地元住民とも交流できる機会を作れるのではないか

(5)日本の場合、「移民ではない」資格を新たに作るのではなく、例えば「累積の納税額が多い人は早く在留資格が取れる」ようにすれば、企業ももっと海外の人材を受け入れるのでないか

(6)企業が海外の人材を受け入れるようになるには、海外人材の採用、育成、日本定住支援、子供の教育支援、などのサービスが充実していく必要があるのではないか