小さすぎず大きすぎない負荷
「処理可能感」を高めるにはどうしたらいいでしょうか。アントノフスキー博士は、処理可能感を高める「良質な人生経験」として、
「過小負荷と過大負荷のバランスがとれた経験」
をあげています。
「過小負荷」とは、「心理的にほとんど負荷がない、ストレスを感じない状況」のことです。
「過大負荷」は、逆に「過度に大きな負荷を強いられた状況」のことで、本人の能力を超えた仕事量や難しい仕事を指示された場合などがこれに当たります。
つまり、「過小負荷と過大負荷のバランスがとれた経験」とは、がんばれば乗り越えられる程度のバランスのとれたストレス下での経験を指しています。
普通に考えると、ストレスをまったく感じない状態が一番いいように思われますが、処理可能感を高めるには適度な負荷やプレッシャーがあったほうがいいことになります。
職場のストレスモデルとして有名なモデルに「仕事の要求度・コントロール度モデル(Job Demands-Control model)」があります。
これによると、やりがいを保ちつつパフォーマンスを発揮できるのは、「要求度」(上司などから仕事の量や質について期待されていること)と「コントロール度」(期待に応えるために必要な裁量権を与えられていること)の両方が高い状態といわれています。
このような状態のもとで仕事をクリアしていくことが良質な人生経験となって、次にもっと難易度が高い仕事がきても「なんとかなる」(処理可能感)と思えるようになり、より大きな仕事、困難な出来事にも対処できるようになります。
つまり、適度な課題を与えられてクリアしていくことによる「成功体験」が、処理可能感を高めることに大きくかかわっているのです。
したがって重圧に耐えかねるような仕事で、結局うまくいかなかったりしたら、処理可能感を培うことにはつながりにくいといえます。
「なんとかなった」経験があるから、次も「なんとかなる」と思えるのです。