巷では「DX」「DX」の大合唱が呪文のように続いています。しかし現場からは、「仕事が増えただけで売上はなかなか上がらない」という悲鳴が聞こえてきます。そんな悲劇を解決すべく、1000社以上の問題を解決してきたITコンサルタント・今木智隆氏が書き下ろしたのが『DX沼からの脱出大作戦』(ダイヤモンド社)です。本連載では、さまざまなデジタルの「あるある」失敗事例を挙げながら、なぜそうなってしまうのか、どうしたら問題を解決できるのかをわかりやすく丁寧に解説していきます。ECサイトやSNSの運営に携わっている現場の方、デジタル広告やデジタルマーケティングに関わっている現場の方はぜひご一読ください。

トップページの「No.1」表記はやっぱり有効Photo: Adobe Stock

「○○で1位」「満足度90%」顧客は実績を見ている

 実績があるとないでは顧客に対する説得力がまったく変わってきます。とにかくアピールを裏付ける素材やデータをできるだけかき集めて、ちゃんと「売り」を作りましょう。
 売りを作るというのは、捏造するという意味ではありません。自社の強みがどこにあるのか定義できているのであれば、それを裏付けするデータは必ずあるはずです。契約件数や金額ベースのシェア、売上、顧客満足度、リピート率、受賞歴、導入事例などなど、大きな企業でも意外にこうしたデータをきちんと把握していなかったりします。

「うちのサービスはみなさんに満足いただいています」という企業の方は多いのですが、「満足度は何パーセントですか?」と尋ねても「わかりません」と言う人がほとんどです。きちんと顧客満足度やリピート率は数字に落とし込みましょう。顧客満足度やリピート率の調査結果はもちろん有力な裏付けになりますし、最近では「価格満足度」という指標もよく見かけるようになりました。

 もちろん、こうした調査はインチキなしできちんと行う必要がありますが、肯定的な結果が出るよう、質問項目にはそれなりに工夫を凝らすことになります。例えば、ビジネス向け英会話のサービスなのであれば、「実践で使える英会話だと感じているか」について、質問の仕方を変えて重点的に尋ねるといったことは行うべきでしょう。

「満足度、90パーセント!」、「リピート率、90パーセント!」、「○○で1位!」など、頭に9の付く数字や1位はやはりマーケティング効果が大きいですから、何とか入れたいところです。「うちが業界最大手だということは常識なんだから、今さら言わなくてもいいだろ」と思っている偉い人はただの傲慢です。世の中の人は、思っている以上に何も知らないものです。

 もっとも、誰に何を聞いてもよい結果が出ないというのであれば、それは商品・サービスが売るべきではない粗悪品だということ。マーケティング施策やDXがどうするという話ではなく、きちんとよいものを作るところからやり直すべきではあります。

「最近はどの商品にも『満足度95%』とか書いてあるけど、私はそんなのに騙されない」「ランキングNo.1って書いてあるからといって、買う訳じゃない」
 一人の消費者としては、そう感じる人も多いでしょう。しかし実際には、「95%」や「1位」といった表記があるのとないのとでは、コンバージョン数に大きな差が出ます。

 あるプロジェクトで行ったA/Bテストでは、「満足度95%」といった表記を載せた場合には、表記なしの場合よりも1.7倍の申し込みがありました。
 色んなサイトで見かけるということは、それだけ効果があるということ。「ありきたり」の一言で却下せず、積極的に取り入れていきましょう。

※本稿は『DX沼からの脱出大作戦』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。