ただ、「売り手市場」で学生優位の状況となっている昨今では、自己理解が深めきれないまま内定をもらえてしまう学生が少なからずいます。リクルートマネジメントソリューションズが行った『2024年新卒採用 大学生の就職活動に関する調査』では、就職活動を終えた大学4年生、大学院2年生のうち、自己理解ができていると思う学生は約6割にとどまることがわかっています。

 また、当研究所が23年12月1日に発表した『就職プロセス調査』では、24年卒の大学生のうち、民間企業への就職確定者に「就活で最も苦労したこと」を聞いています。上位を占めたのは「面接を受ける(対面)」で18.2%、「自己分析」が18%とほぼ同率となっており、自己分析をどう進めればいいのか迷っている様子がうかがえます。

子どもが自己分析を
深めるための“第三者視点”を提供

 保護者は、子どもが小さい頃から身近で接してきた存在です。過去にどんなことに興味を持ち、何にやりがいを覚えて夢中になっていたか。具体的なエピソードを交えて、子どもの強みや弱みを客観的に伝えられる、最も身近な社会人の先輩とも言えるでしょう。本人が気づいていない良さや個性を伝えることで、子どもが一人で進めていた自己分析に新たな視点が加わり、自己理解はより深まっていきます。それにより、社会や企業との接点を見出しやすくなるかもしれません。

 先に社会に出ている先輩として、子どもの選択肢を広げられるのも、保護者ができることの一つです。就活中は、一生懸命になればなるほど「内定獲得」を短期的なゴールと捉え、視野が狭まってしまうもの。選考が本格化すれば、不合格通知を受け取ることも増え、不安感も高まっていきます。

「せっかくの機会だから、こんな業界も見てみては?」「こんな仕事も、得意分野を生かせて働けるかもしれないよ」など、子どもの視界を広げるような言葉をかけられるのも、状況を客観視できる保護者ならでは。意見の押し付けにならないよう、子どもの思いや行動を尊重した上で、「自分らしく生きるために働く」道を、ぜひ一緒に考えていってほしいと思います。

(リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥)