文面だけのやりとりで
疑心暗鬼が募っていく

中高生の悩み
SNSでのメッセージのやり取りで、不安になることが多いです。「もしかして怒ってる?」と心配してしまいます。SNSのメッセージに振り回されないためには、どうしたらよいでしょうか。

 現代が生んだ新しいお悩みですね。これは、ある哲学者の考えが子羊さんのお悩み解決のヒントになります。オーストリアの哲学者エトムント・フッサール(1859-1938)です。

 フッサールは、現象学の創始者と言われています。現象学をわかりやすくいうと、「心に浮かんできたことを重視する立場」と思っておいてもらえばいいかと思います。フッサールの考えを要約してみるとこんな感じなります。「エポケーして、モジモジしないコミュニケーションを取りましょう」。

 まずは、エポケーという言葉を説明するためにも、今回のお悩みの仕組みを見ていきたいと思います。例えば、ある人とリモートではなく、直接会ったときに、私がイライラして貧乏ゆすりをしたとしましょう。

 そうすると、相手の人は、貧乏ゆすりという動作から、私がイライラしているのではないかと感じると思います。表情や態度、身振り、手振り、声、雰囲気などが分かりにくいリモートよりも、私がイライラしているかどうかについて、より正確な情報を得ることができるからです。

 でも、SNSはどうですか?文字だけですよね。情報が圧倒的に足りないんですよ。そんな時、人はどうするか。足りない情報、つまり相手の真意や感情、状況、これを想像して、相手の全体像をなんとか捉えようとしてしまいます。文字だけを見て、「もしかしたらこれ、怒ってるんじゃないか?」と疑心暗鬼に陥ってしまうのです。まさにここに問題があるのです。それは何か?想像の方法です。

客観的に想像せずに
主観で物事を捉えてみる

 ここで、まず実験をしてみましょう。自分が丘の上に立って花を見ている様子を思い浮かべ、その様子を絵に描いて下さい。どんな様子を思い浮かべましたか?もしも、丘の上に立つ自分の絵を描いた場合は、真実に近づけているとは言えません。