実際には、自分から自分自身はほぼ見えませんから。つまりこの絵では、「丘の上から花を見る」ということが、知識や先入観、世の中一般でよく言われることに頼って想像したものになっているのです。

 では、真実に近いのはどういう絵か?それは花だけを描いたものです。この違いがフッサールの言う想像の方法の違いです。

 フッサールは、想像の方法には、真実に近づけていない方法と、真実に近づけている方法の二種類があると考えました。

 前者は客観。つまり、自分の外からの情報に頼って物事を捉える方法です。後者は主観。つまり、自分の直接の経験から得た情報で物事を捉える方法です。現代人は、つい客観で想像しがちです。例えば私たちは、実際に自分の目で見たこともないのに、「地球は丸い」と信じています。なぜか?それはフッサールにいわせると、19世紀になり科学が発展するにつれ、人々はデータ、つまり客観に頼って物事を捉えるようになってしまったからです。

 したがって、客観と主観の違いはズバリ、自分の想像に自信が持てるかどうかにつながってきます。自分が直接経験したことは、絶対に疑いようのない事実です。だからその想像には自信を持つことができます。他方、客観は外からの情報に頼って物事を捉えているわけですから、実はいくら想像しても、むしろ勘違いかもしれないのです。

 SNSでのやりとりの場合、ただSNS上で見聞きしたことではなく、やりとりしている相手と「直接」接した時に感じた自分の経験を思い出して下さい。つまり、主観で対応すれば、自信を持って対応することが出来るはずです。モジモジせずに、主観で対応するために必要なのが「エポケー」です。文字を見た時、人は外からの客観的な情報を思い浮かべてしまいますが、それは一旦カッコに入れて、脇に置きましょう。能動的に判断を中止すること、これが疑心暗鬼に陥らないための方法、「エポケー」なのです。

悩みへの答えの一例
友だちから不安なメッセージが来たときは、その友だちがふだんその言葉をどんな表情や口調で発しているか思い出してみて。きっと怒っている感じじゃないよね?それを信じよう!文字からの情報だけではなくて、自分の経験を信じると、なんだか気が楽になりませんか?