ディー・エヌ・エー(DeNA)の子会社が自治体から取得した医療データについて、「製薬会社や保険会社に有償で提供した」と自治体に説明していることが分かった。DeNAはこれまで目的外利用の疑惑を否定していたが、自治体に対しては有償提供の事実を一転して認めた形だ。特集『DeNA医療データ乱用』(全6回)の#1では、ダイヤモンド編集部が情報公開請求でDeNAと自治体の契約書を入手し、疑惑を検証した。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
DeNAと自治体の契約書を計14点入手
医療データ目的外利用の責任や違法性は?
ダイヤモンド編集部は2023年12月18日に配信した『【スクープ】DeNAが医療データ「目的外利用」の疑惑浮上!提供自治体が調査へ』で、ディー・エヌ・エー(DeNA)の医療データ「目的外利用」疑惑を報じた。疑惑の舞台であるDeNAの医療データ利活用事業について、簡単に説明しよう。
DeNAの連結子会社には、データホライゾンとDeSCヘルスケア(ディーエスシーヘルスケア)がある。データホライゾンは医療データを自治体から取得し、DeSCに提供。DeSCがそれを匿名加工処理した後、製薬会社や保険会社に販売する流れだ。
問題は、自治体の医療データをどのように取得しているかだ。12月18日の記事では、DeNAが契約書の目的を逸脱して製薬会社に販売している疑惑を報じ、DeNAはリリースで即座に否定した。
しかし報道後、各地の自治体から説明を求められたデータホライゾンの担当者が「医療データの匿名加工情報を、製薬会社や保険会社に広く有償で提供した」と説明していることが新たに判明した。その上で製薬会社などへの有償提供も「(自治体から委託された)契約の範囲内だった」という弁明を続けている。自治体側の反応は「事前に全く説明がなかった」「契約内容を逸脱している」と冷ややかだ。
ダイヤモンド編集部はその実態を詳細に把握するため、DeNAが反論のリリースで補足した業務名に注目し、同じ業務が記載された契約書を特定した。そして各地の自治体から、情報公開制度を通じて計14点の契約書を入手し、自治体担当者への取材を試みた。すると契約書に記載の業務内容からは到底想像もつかない、目的外の利用が明らかになった。
問題はDeNAのみにとどまらない。自治体はDeNA側の説明に不信感を募らせているものの、報道から2カ月が過ぎた今も表立った動きがない。その最大の理由は、自治体がDeNAの目的外利用を認めれば、DeNAだけでなく自治体にも個人情報保護法違反の可能性が浮上するからだ。
こうしたDeNAと自治体の違法性を検証するため、次ページでは入手した契約書の内容を公開する。契約書の核心部分を巡る自治体とDeNAの主張の相違とは何か。弁護士ら専門家の見解を基に問題の核心に迫った。