DeNA 医療データ乱用#6Photo by Yoshihisa Wada

医療データの利活用の意義から個人情報保護法の問題、さらにはDeNA報道まで、特集『DeNA医療データ乱用』(全6回)の最終回では情報法制研究所(JILIS)副理事長の高木浩光氏に見解を聞いた。高木氏は「医療データを持っている組織に二次利用の監督能力を期待しても、無理がある」と述べ、DeNAの「医療データ目的外利用」報道で浮上した構造的な課題を指摘した。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

医療データの二次利用が医薬品開発に寄与
機運が高まる中でのDeNA報道をどう見る?

――医療データの利活用を推進するための政府の議論が活発化しています。医療データの利活用にはどのような意義があるのでしょうか。

 まず学術研究ではすでに可能で、実際に使われています。長期的な診療記録を基に分析することによって、原因と結果の相関分析ができます。すでに多くの成果が出ています。

 今日新たに議論になっているのは、医薬品や医療機器の開発です。

 製薬メーカーによる医薬品開発は、医薬品の効果を証明する治験のために被験者を集めてテストをすると、たくさんの人を集めるのに高いコストがかかります。そこで医療データを活用すれば、諸費用を抑えられます。さらに新しい薬を開発する上でも、医療データが役に立ちます。

 医療機器メーカーによる製品開発では、AIなどの機械学習により、たくさんの診断画像が重宝されます。今はデータを集める上で同意を取らなければならないので、基になる量が少ないことが課題です。

 医療データを二次利用する意義は大いにあります。しかし法律上、製薬メーカーによる開発や医療機器メーカーによる製品開発は学術研究から外れるので、どのように適法にできるかが議論されています。

――医療データ利活用推進の機運が高まる中、本特集では、ディー・エヌ・エー(DeNA)が自治体から保健事業の分析サービス業務を委託されて預かった医療データを製薬会社に販売するなど、目的外に利用していることについて報じました。問題はどこにあるのでしょうか。