罠の原因は「やれやれ売り」

 どんな人でも一度はリターンがマイナスになる経験をします。その後、資産が、徐々にゼロに近づいてきて、プラスに転じるわけですが、まさにそのタイミングで、多くの人は「プラスのうちにやめてしまおう」「いったん売却して様子を見よう」と考えます。

 相場が回復したときに「やれやれ」という気持ちで安心して売ってしまうので、このような行動を「やれやれ売り」と呼びます。

 過去のデータを見れば、マイナスからプラスに戻ったタイミングでやめずに持ち続けていれば、相場はその後も上昇していく可能性が高いことがわかっています。しかし、損益がプラスからマイナスに変わる経験をした後だと、「また同じ経験はしたくない」という気持ちになりやすく、「やれやれ売り」の罠に陥りやすいのです。

 ウェルスナビの利用者のデータを分析すると、さらに興味深い事実が見えてきます。「やれやれ売り」をした利用者のうち、一定割合の方が、その後、さらに相場が上がると、ウェルスナビでの資産運用を再開したのです。

 相場が上がってから資産運用を再開しているため、「やれやれ売り」をした時点よりも、高い株価で資産運用を再開していることになります。このため、「やれやれ売り」で資産運用を中断せずに、そのまま続けていたほうが得でした。「やれやれ売り」の心理的な罠を回避することが大切です。

 私自身も、「やれやれ売り」をしたい誘惑に駆られたことがあります。ウェルスナビを創業する前、「長期・積立・分散」の資産運用を自分で始めたばかりの頃、しばらくプラスのリターンが続いた後でマイナスになり、またプラスに戻ったことがありました。

 そのとき、「このタイミングで利益を確定したほうがよいのでは」と迷ったことを覚えています。しかし、その後も資産運用を続けて、リターンが20%を超えた頃から、短期的なリターンはまったくと言っていいほど気にならなくなりました。