2024年1月からついに開始された「新NISA」。この機会をきっかけに投資をはじめてみようと考えている人も多いのではないだろうか。そんな新NISAは、実は初心者が投資をはじめるのに最適な制度と言える。だが、落とし穴がないわけではない。目先の利益に執着してしまったり、経済の動向を見て焦って投資をやめてしまったりする人も少なくない。そんな課題を解決するために発刊されたのが『新しいNISA投資の思考法』だ。本書はこれまで37万人の資産運用を見続けてきたウェルスナビ・CEOの柴山和久氏が投資に必要な考え方を1冊にまとめたまさに決定版だ。本記事では本文の一部を抜粋してお届けする。

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急減したリターンが回復すると、それ以上続けられなくなってしまう

 NISA初心者にとって注意が必要なのが、相場急落後の回復時に待っている罠です。これは資産が急減した後、徐々に金融危機前の水準まで回復してきて、プラスに戻ったタイミングで長期投資をやめたくなるという罠です。

 具体的な例を見てみましょう。

 2020年の初めに世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大した際、金融市場は大きく混乱しました。世界的に株価が大きく下落し、「パニック売り」と呼ばれる行動が連鎖しました。コロナ・ショックの時は、2019年末のS&P500を100とすると、1ヵ月で約3割下落した後、その後は回復していきました。

 この時期、ウェルスナビでは、私自身のビデオメッセージを発したり、投資を続けていくうえでの疑問や不安にニュースレターやコラムでお応えするなど、利用者の方々の長期投資をサポートするための努力を懸命に続けました。

 その成果もあってか、相場が急落した1ヵ月間をみると、1円でも解約してお金を引き出した方は全体の5%に留まりました。つまり、95%の方はそのまま資産運用を継続したということになります(さらに、そのうちの7割近くの方が、積立や一括での入金でウェルスナビで運用する資産を追加しました)。

コロナ・ショック時の相場急落局面

 それから半年あまりの間、相場は少しずつ回復していきました。そしてコロナ・ショックの発生から約9ヵ月が経った2020年11月には、S&P500はコロナ・ショック前の水準に戻り、さらに上昇していきました。

 コロナ・ショックを乗り越えたこの時に、長期投資を中断する利用者が増えるのではないかと、私は懸念していました。そして、その懸念はまさしく現実のものとなりました。

コロナショック後

 株価がコロナ・ショック前の水準まで回復した直後の1月あまり、コロナ・ショックの最悪期を上回る数の利用者が長期投資を中断してしまったのです。これが初心者が陥る罠です。