SUV台頭で2ドアクーペ市場は
今後も縮小か?
スポーツカーが直面している、もうひとつの課題が消費者ニーズの変化だ。
端的に言えば、SUVの台頭である。
SUVは1990年代後半、アメリカのピックアップトラックをベースとした多目的車として普及し、2000年代半ばには欧州、日本の各メーカーが多様なモデルをグローバルで市場導入。さらに10年代には中国でもSUVの需要が一気に高まった。
そうした中で、高級でスポーティーなイメージの新たなるSUV市場が拡大。ベントレー「ベンテイガ」の登場を機に超高級車の分野での競争が激化し、ロールスロイス、ランボルギーニ、アストンマーティン、フェラーリなどが次々とSUV市場に参入してきた。なかでもランボルギーニ「ウルス」は同社の販売台数を倍増するヒット作となったことが記憶に新しいところだ。
日本でも、スポーティーなSUVが増えてきており、そうした商品開発の姿勢が旧来のスポーツカーのイメージである車高の低い2ドア車の存在感を弱めているように感じる。
その上で、日系メーカー各社は新たな商品戦略を打ち出している。
日産「NISMO」、トヨタ「GR」など、スポーティー性を強調するサブブランドの商品構成の拡充である。
スカイライン NISMOの発表会で、日産モータースポーツ&カスタマイズの片桐隆夫社長は「スポーツカーを求めるユーザーは国内でも一定数いる。その市場に向けたモデル開発を今後も進める。電動化については日産全体として考慮することであり、現状では弊社としての方向性は答えられない」と言うにとどめた。
また、トヨタは「GRガレージ」拠点を着実に増やし始めており、車検にも適合するアフターマーケットの扱いや、販売各社が手軽に参加できる地域のモータースポーツイベントを開催するなど、スポーツカー志向の強いユーザーの需要の深掘りを試みている。
そのほか、マツダの毛籠勝弘社長は1月の東京オートサロンで、22年から国内スーパー耐久シリーズ参戦を機に立ち上げた、サブブランド「MAZDA SPIRIT RACING」による量産化開発を進めていることを明らかにしている。
このように、スポーツカーの分野では、超高級と日系サブブランドという二極分化が今後、さらに進む可能性が高いと考えられる。
その上で、日本のスポーツカー文化が今後、途絶えないことを願う。