超高級スポーツカーは
CN燃料とPHEVが主流か?

 例えば、新車価格が3000万円から数億円にも達する超高級スポーツカー市場の筆頭メーカーであるフェラーリは、「26年までに、グローバル売り上げの約60%をEVまたはプラグインハイブリッド車(PHEV)」とする計画を公表している。残り約40%はCN燃料を活用した内燃機関を維持するとしてきた。

 こうした電動化の割合には、欧州連合の環境施策の見直しが影響することも考えられる。また、フェラーリの主力市場であるアメリカでの政治動向によって見直される可能性もある。特に、11月の大統領選挙でトランプ氏が大統領に返り咲いた場合、バイデン政権が進めてきた積極的なEVシフトの政策変更が予想される。

 同じイタリアの超高級スポーツカーメーカーであるランボルギーニも、フォルクスワーゲングループ傘下であることから、ポルシェ・アウディとのEVパッケージの共用化を進めると同時に、PHEVの量産化を進める。同社のステファン・ヴィンケルマンCEO(最高経営責任者)が22年11月に来日し、筆者がインタビューした際に「電動化と合わせて、CN燃料の重要性が今後さらに高まる」と将来事業の方向性を示した。

ランボルギーニ初のPHEV「レヴエルト」ランボルギーニ初のPHEV「レヴエルト」。23年6月都内にて Photo by K.M.

 英国では、フォーミュラ1(F1)活動を本格化させているアストンマーティンが2月末に都内で実施した新型「ヴァンテージ」発表会で、電動化ではない方法でエンジンのハイパワー化を実現したことを強調した。同モデルはモータースポーツ用の仕様もあり、そちらはCN燃料を使うが、一般量産モデル向けのCN燃料の普及はまだ少し先になりそうだ。

 一方、超高級スポーツカーと比べて価格が300万円~700万円程度と手頃で一般ユーザーも手が届く商品構成である日系スポーツカーの場合、各社は現時点で将来構想としてEV化やPHEV化を明確に示していない。

 例えば、マツダの場合、30年まで3つのフェーズに分けて電動化を進めていくことを明らかにしている。この中にロードスターも含まれていることをマツダ幹部は明言してはいる。

 だが、昨年10月には8年ぶりにロードスターを大幅改良し、1月に静岡県内で報道陣向け公道試乗会を実施した際、開発担当主査は「できるだけ長く、現行ロードスターを売っていきたい」と言うにとどめ、具体的な電動化戦略については触れなかった。

 フェアレディZについても、21年8月に北米仕様が初公開されてからこれまで、日産は電動化を伴う次世代Zの方向性を示していない。

8年ぶりに大幅改良したマツダ「ロードスター」8年ぶりに大幅改良したマツダ「ロードスター」 Photo by K.M.

 ジャパニーズスポーツカーの真骨頂は、それぞれのモデルで技術的なパッケージとして見れば海外メーカーと比べてリーズナブルな価格で、スポーツカーを愛するユーザーの心をつかむパフォーマンスを実現することにある。

 そのため、現状の開発手法では確実なコストアップにつながる電動化を、どのような形で取り入れるのか、その判断がとても難しい。

 その点、レクサスの場合は価格設定が高いことから、スポーティーなモデルを含めてEV化に大きく振りやすい。レクサスは30年までに北米、欧州、中国でのモデルラインアップ100%をEV化するとしている。

 いずれにしても、20年代後半には、日系メーカー各社はグローバルでの環境政策をにらみながら、それぞれのスポーツカーの電動化について技術的な詳細を開示することになるだろう。