火あぶりにされながら叫び続けた
成功後につまずくと、人生が急速に暗転するのは、何も突然、反対勢力が湧いてきたからではない。以前から活躍を面白く思ってなかった連中が、一気に引きずり下ろしにかかるため、成功後の転落は落差が激しくなる。
裁判では、教会への服従を命じられても、あくまでも「神に従う」と主張したジャンヌ。有罪判決が下されると、「悔い改めること」「男装をしないこと」を約束し、いったんは減刑されるも、結局は再審理にかけられる。非情にもジャンヌは、市民が見守るなかで、火あぶりの刑に処されることとなった。
ジャンヌは炎の中で、大声で何度もこう叫び続けたという。
「イエス様(Jesus)! イエス様! イエス様!」
身体が焼き尽くされて灰になっても、心臓は血まみれのままだった――。そんな噂が人々の間では広まったという。
若き英雄がジャンヌを蘇らせる
壮絶な生涯を送ったジャンヌ・ダルク。死後300年以上が経ってから、彼女の生き様にスポットライトをあてた人物がいる。ナポレオン・ボナパルトだ。
フランス革命後の国内をまとめあげるため、ナポレオンは彼女の名を発掘。フランスのために戦うべしと国民を鼓舞している。
英雄によって蘇った英雄は、フランスの救世主として語り継がれることになった。
【参考文献】
レジーヌ・ペルヌー著、マリ=ヴェロニック・クラン著、福本直之訳『ジャンヌ・ダルク』(東京書籍)
加藤玄著『ジャンヌ・ダルクと百年戦争: 時空をこえて語り継がれる乙女』(山川出版社)
藤本ひとみ著『ジャンヌ・ダルクの生涯』(講談社)
高橋慎一朗編、千葉敏之編『中世の都市―史料の魅力、日本とヨーロッパ』(東京大学出版会)
中野隆生編著、加藤玄編著『フランスの歴史を知るための50章 エリア・スタディーズ』(明石書店)
(本原稿は、『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からの世界史』に関連した書き下ろしです)