「経営の中心に人を置く」と
社員に当事者意識が生まれる

 本来は図3のように、「目的」と「手段」の中心に「社員」を置く必要があります。「社員」は「目的」と「手段」をつなぐ主体だからです。これが「経営の中心に人を置く」という意味です。

図3出所:石原正博著『カスケードダウン』(ダイヤモンド社)

 カスケードダウンでは、この「経営の中心に人を置く」という考え方をとります。

 社員を経営の中心に置くと、社員が「目的」である経営戦略を理解するようになります。次に、その「目的」を実現するために自分は何をすべきか、「手段」を社員自身が考え、選択していきます。社員は経営戦略を実行する「当事者」となり、経営への参画意識や当事者意識が醸成されていきます。結果として、モチベーションや働きがいの向上にもつながっていくのです。

 当事者意識が生まれた社員ほど強いものはありません。日々の仕事を自社の成長に向けた仕事へと変革していき、経営者が望む結果を生むことにつながるのです。

 では、「目的」「社員」「手段」の三つをどのように結び付けていけばよいのでしょうか?

 この度執筆した『カスケードダウン――人と組織が自ら動く経営戦略の浸透策』では、三つのステップでカスケードダウンを実施し、「目的」「社員」「手段」を結び付けていく方法を紹介しています。カスケードダウンによって、「結果を生み出す人的資本経営」を実践していただければと思います。