故意なのかそうでないかわかりづらいために、差別だと指摘しづらい。差別ではないかと指摘しても「ミスしただけ」「偶然です」などと言われてしまう。

 今回の件も壇上での様子は、不運な事故のようにも見えるし、無意識の差別意識の表れにも見える。それだけに、「故意にやったわけじゃないだろう」という擁護意見に、納得しがたい感情を持つ人もいる。アジア系への差別を知らないから、そう言えるのではないかと。

 ミシェル・ヨーは前述のように、インスタグラムでコメントを出した。これは不運な誤解であると知らしめるための投稿だ。

 しかし、被差別側がこのように「私は気にしていない」とか「これは差別ではない」という態度を取ることが実際にある差別を温存させるとして、ミシェルの投稿を批判する人もいる。

 とにかく、今回改めて問題提起されたのはアジア系への差別の根深さだ。アジア系として差別をされた経験を持つ人たちは、今声を上げなければ軽視や蔑視が繰り返されると感じている。日本人は差別に抗議したり、声を上げたりすることが少ないと言われがちだが、SNSでは声が可視化されやすい。

日本はやはり「アニメとゴジラ」なのか
またいつの日か俳優の受賞を見たい

 今回、日本の作品は長編アニメーションと視覚効果賞を受賞した。2022年に村上春樹原作の『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)が国際長編映画賞を受賞しているが、2000年以降の日本映画での受賞はアニメ作品関連の印象が強い。国別の印象として日本はアニメ(漫画やイラスト含む)とゴジラと言われがちだが、アカデミー賞においてもその傾向がうかがえるように感じられる。

 日本人俳優の受賞者は、今も1957年のミヨシ・ウメキ(ナンシー梅木/助演女優賞)のみ。アジア系はオーディションに受からない、そもそもアジア系の登場する作品が少ないといった問題が指摘されているが、いつかまた日系の俳優がアカデミー賞に輝く日が来るだろうか。その日が来ることを待ち望みたい。