2017年の発売以降、今でも多くの人に読まれ続けている『ありがとうの魔法』。本書は、小林正観さんの40年間に及ぶ研究のなかで、いちばん伝えたかったことをまとめた「ベスト・メッセージ集」だ。あらゆる悩みを解決する「ありがとう」の秘訣が1冊にまとめられていて、読者からの大きな反響を呼んでいる。この連載では、本書のエッセンスの一部をお伝えしていく。

ありがとうの魔法Photo: Adobe Stock

人生は、努力したり、頑張る必要はなく、ただ「頼まれごと」をやればいい

 結論を言ってしまいますと、人生というのは、努力をしたり、頑張ったりする必要はないようです。

 ただ、「頼まれごと」があったらそれに対して、「はい、わかりました」と言ってやっていけばいいということです。

 それがじつは、「ビジネス」ということ。「ビジネス」とは、忙しく頼まれごとをやっていくということです。

「結婚も頼まれごとなのですか?」と聞かれることがあります。本人が「頼まれた」と思ったら頼まれごとですし、「これは頼まれごとではない」と思ったら、頼まれごとではないのです。

 江戸時代初期に、狩野探幽という画家がいました。狩野探幽が55歳のとき、8年間かけて描いた「八方にらみの龍」という天井画があります。どこから見ても龍と目が合うので「八方にらみの龍」と呼ばれています。

「龍」は、禅宗では非常に重要な守り神ですので、龍の絵を描くということは、大変、光栄なことであると同時に、大変な重責でもあったことでしょう。

 探幽は、この絵を描き上げるまでに8年間かけていますが、最初の3年間は、筆を握っていないそうです。3年間、毎日お弁当を持っていって、朝から晩まで天井を見ていました。夜暗くなって天井が見えなくなると、しかたなく家に帰ったと聞きました。

 狩野探幽にも、自分で描きたいものがあったのかもしれませんが、頼まれごとだけに8年間費やしています。普通の人なら、この8年の間に、迷いや葛藤があったりするでしょう。でも、「頼まれごとこそ、人生なんだ」ということがわかっていると、迷わなくなります。

 おもしろいことに、人間の業績というのは、「頼まれごと」によって、全部決まってくるようです。頼まれたことをやっていると、それが、人生の非常に大きな部分を占めていきます。

 私たちは、人生というものは、「自分が努力をして、汗をかいて、自己達成目標を立てて、そこに向けて努力邁進することが目的である」と教え込まれてきました。

 私たちは、「競うこと」「比べること」「争うこと」が人間の価値を決めると教え込まれてきたのです。

 しかし、戦うこと、争うことは、本筋ではないようです。頼まれたことを、淡々と、やればいい。

 私が「き・く・あの思想」、すなわち「(き)競わない」「(く)比べない」「(あ)争わない」を提案しているのは、「競わないこと」「比べないこと」「争わないこと」が、幸せになれる近道だと思えるからです。