50代になって出世街道から離れたなら、もうガムシャラに会社に尽くす意義などありません。後ろ指をさされようが、ムダな残業などをしない省エネワークスタイルを貫くのが正解です。

 そうして空いた時間を、自分がやりたいことのために充てるのです。

 実際、働かないおじさんになったからといって、クビになる心配はありません。

 日本では労働契約法の第16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」といった条文があります。労働関係の法律は、基本的に被雇用者を守るためにあるものなので、極めて被雇用者側に有利なものになっています。

 やるべき仕事はソツなくやりはしますが、余計な仕事は他人まかせに。残業などせず、さっさと帰りましょう。

 そして、残りの10年間は、そこそこの給料をもらいながら、自分の時間を作って、そこに時間や体力や好奇心を注ぐのが、幸せの近道です。

 50代からは、自分のリソースを、会社ではなく、自分自身に費やすのです。

定年延長や再雇用にひそむリスク

「働かないおじさんになったら、定年延長は期待できない」

「収入が少なくなる恐怖がある」

 確かに、定年延長や収入アップの道は閉ざされる可能性は高いでしょう。

 でも、そのほうがラッキーかもしれません。

 最近は、いったん60歳で定年させ、その後は嘱託(しょくたく)などで再雇用して65歳まで働かせるケースが増えています。継続雇用制度です。今は人手不足のため、働き手が欲しい企業がほとんどです。ただ年功序列でムダに高くなった給料は払いたくないというのが企業の本音でしょう。

 だから役職をはがしとったうえで、再雇用という名目で、これまでの職級を離れて新たな給料体系を採り入れられるのは、企業にとって都合がいい。会社にしがみつきたい被雇用者側にとってもまた、都合がいいわけです。

 しかし、実際に再雇用された人の話を聞くと、どうも不満を抱く人が多いようです。役職は奪われ、給料も半分程度にまで減らされているのに、「これまでとほとんど同じ仕事を同じくらいやらされている……」という声が少なくないのです。