日本→海外のスポーツベットにはまだハードルも
海外送金の簡易化・AI進歩で変化の可能性大

 話を今回の騒動に戻そう。

 水原氏が大金をつぎ込むほどスポーツベットにのめりこんでしまったのは、アメリカにいたことも大きな要因の一つではないかと思う。

 スマホ一つでギャンブルができるといえども、日本では実際にブックメーカーに入金するのは簡単ではない。基本的には、アカウントを開設した上で、ブックメーカーの口座にドル送金するか、クレジットカード会社でのチャージが必要になる。

 日本のクレジット会社の多くはスポーツベットのブックメーカーにチャージができないような対応をしているので、日本でチャージをするのはかなりハードルが高いし、ドル送金も同様である。チャージできなければギャンブルができないので、水際でギャンブルという底なし沼にハマらずにすむ。

 しかし、アメリカでは日本にいるよりもチャージすることが容易であろう(ただ、今後は日本でも海外送金のハードルはますます下がるだろうし、暗号資産でのチャージももっと改善されてハードルが下がるはずだ)。

 そして、元手がなければギャンブルも大してできないが、水原氏のように著名人で、お金を持っている人は、ギャンブルに限らずいろいろな投資話が自分の身の回りに寄ってきてしまうのが常だ。

 筆者の知人にも、ギャンブルはしなくても、証券投資や海外不動産投資、暗号資産詐欺などで大損したという人が大勢いる。大学時代に父親の死で2億円を相続したが、高校時代の友人から投資詐欺に遭い、相続した資産がゼロになったという人もいた。

 外野に身を置き、水原氏を批判するのは簡単だ。しかし、推し活の延長線上でギャンブルにハマる可能性があることや、スマホやタブレットの普及でますます海外スポーツイベントおよびスポーツベットへのアクセスが簡単になっていることを踏まえると、多くの人にとって他人事ではないはずだ。

 AIなどで通訳機能が充実すれば、海外サービスへのアクセスはよりいっそう簡単になるだろう。

 ギャンブルは怖い。私は長年さまざまな富裕層を見てきたが、もともと富裕層であったのにもかかわらず、ギャンブルにより十億円ほど他人のお金を使い込み、命を絶った人間もいる。

 ご存じの通り、日本において賭博行為は現在も違法ではあるのだが、スポーツベットをきっかけとしたギャンブル沼には今まで以上に注意しなければならない。繰り返しになるが、他人の話ではなく、今そこにある危機なのだ。