iDeCoで運用すべきお薦めの銘柄を教えてください!

━━節税効果にメリットを感じ、iDeCoの運用を始めたいと思いました!でも何に投資すればいいのか分かりません。

 iDeCoは、投資信託・定期預金・保険商品での運用ができます。各金融機関によりラインアップは異なりますので、ラインアップを見た上でiDeCoを運用する金融機関を決めるのもよいでしょう。

 iDeCoの利用を始める際には、自分でどの銘柄に投資するかを決める必要がありますが、お薦めは全世界の株式に投資する「全世界株式型」の投資信託です。理由としては、全世界の株式に投資することでリスク分散ができますし、バランスも良いからです。

━━元本割れが怖いです。iDeCoでは定期預金での運用もできるそうですが、実際メリットはありますか?

 定期預金は安心感があるかもしれませんが、現状は得られる金利よりiDeCoを利用する際にかかる手数料の方が高いです。せっかくiDeCoで運用するのであれば、値上がりに期待して、投資信託での運用をお勧めします。

iDeCoで運用する際の注意点を教えてください

━━iDeCoのデメリットはありますか?

 iDeCoのメリットでもありデメリットでもありますが、iDeCoで運用している資金は原則60歳まで引き出しができません。

 また、加入後10年間は拠出・運用を続けなければならないため、50歳以降に加入した場合は、受給開始が61歳以降になります。例えば、50歳1カ月~52歳で運用を始めた人は、61歳以降の引き出しとなります。引き出せないことで老後資金を強制的につくれますが、急に資金が必要になったときに流動性がないのはデメリットです。

 またiDeCoは原則途中解約が不可、掛け金の金額も年に1回しか変更できません。また、掛け金の変更は、反映までに1カ月半から2カ月半ほどかかります。そのため、無理なく運用できる金額を拠出するのがお勧めです。

 さらに一度受給を開始すると、65歳未満でも掛け金の拠出はできなくなってしまいます。その点は注意しつつ、計画的に受給しましょう。

━━急な出費がかさみ、拠出が難しくなってしまったらどうすればいいでしょう?

 拠出が難しくなった場合に停止もできますが、その間も毎月66円の事務委託手数料などがかかり続けます。そのため、一度iDeCoの運用を始めたら、最低掛け金の月5000円でも運用し続けることをお勧めします(図3参照)。

 毎月の捻出が難しい場合は、年払いを活用するといいでしょう。年払いの最低金額は6万円(5000円×12カ月)です。例えば、1年間の収支を見て無理なく出せる金額を拠出したり、冬のボーナスから拠出したりするのもよいでしょう。

【ミドル&シニアのための“超王道”投資術】第3回 横山先生、50代、60代が今さらiDeCoを始めるべきですか?図3 途中解約が原則不可のため、新NISAと内容をしっかり比べて始めたい
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iDeCoの受け取り方で有利なのはどれですか?

━━受給方法は自分で選べるそうですが、どの受け取り方が一番得なんですか?

 iDeCoを受け取る方法には、以下の3種類があります。

 (1) 一時金として受け取る
 (2) 年金として受け取る
 (3) 一時金+年金として受け取る

 iDeCoを(1)の一時金で受け取る場合、退職金の扱いとなり、退職所得控除が適用されます。iDeCoの加入年数や勤務年数にもよりますが、一時金で受け取る方が(2)の年金として受け取るより節税効果が大きいです。

 ただし、iDeCoと退職金を同時期に受給する場合、両者の合算額に対して控除が適用されます。そのため、退職金がたくさんあり、課税所得が多くなり過ぎる場合は、iDeCoを(2)の年金として受け取る、あるいは(3)の一部を一時金として受け取り、残りを年金として受け取る方が、税金を減らせる可能性があります。

 なお、iDeCoを(2)の年金として受け取る場合は、公的年金等控除が適用されます。例えば、60歳でその他合計所得1000万円以下の場合、毎年受け取る公的年金などの合計60万円までが非課税です。iDeCoのほかに公的年金やその他の所得があり非課税枠を超える収入になれば、所得税を支払う必要が出てきます。

 まずは自分の退職金や公的年金、その他所得が幾らあるかを確認し、それぞれに合った方法での受け取りを検討しましょう。

【iDeCoにおける王道投資術】
✔老後資金を強制的にとにかくためたいというなら、60歳まで解約できないiDeCoを利用すべし。しかし、住宅資金や教育資金のめどが立っていないなら、NISAを優先すべし

✔iDeCoの最大のメリットは所得控除。50歳から15年間、積み立てをすると、124万2000円の税金が戻ってくる(会社員、年収800万円、掛け金2万3000円)。税率の高い人ほど、やる意味はある制度

✔iDeCoの受け取りは、一括でも、年金としてでも、一括と年金方式の組み合わせでも受給可能。それぞれ、退職所得控除と公的年金等控除を受けられる。自分のライフスタイルや節税メリットを考えて選択すること

✔やってはいけないのは、積み立ての停止。手数料だけを取られて、資産が目減りしてしまう。積み立てをスタートしたら、最低月5000円は続けるようにすること

3回に分けてミドルとシニアの王道投資術を学んできましたがいかがでしたでしょうか。次回、第4回は番外編として投資有名人の新NISA戦略をお届けします。

【ミドル&シニアのための“超王道”投資術】第3回 横山先生、50代、60代が今さらiDeCoを始めるべきですか?

 【監修者Profile】

横山光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、マイエフピー代表
「消・浪・投®」の家計管理と投資を両輪に資産形成を目指す提案が好評。家族マネー会議も評判。現場にこだわるファイナンシャルプランナーで相談件数は2万6000件超。シリーズ累計95万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』など著作181冊、メディア出演多数。