最近でも、秋田犬が人間のおばあさんに引かれて散歩をしていたところ、転んでしまったお婆さんに対して急に覆いかぶさったといいます。たまたま向こうからは車が走ってきていたそうで、秋田犬がおばあさんを守ったような格好です。

 しかし、じつのところは、倒れたおばあさんに対して、その秋田犬も倒れた獲物に襲いかかる本能がはたらき、覆いかぶさったのかもしれません。その秋田犬は、おばあさんを噛むようなことはしなかったといいます。瞬間的に本能がはたらいて襲いかかろうとしたものの、飼い主であるとわかって噛みつかなかったものと考えられます。

 こうした話はあるものの、秋田犬は日本を代表する大型犬の一つとして繁栄してきました。いまから65年前の新聞に掲載された秋田犬の姿を見ると、いろいろなタイプがいたことがわかります。これは当時、闘犬として改良されたため洋犬の血が入って見た目もさまざまになっていたことの表れですが、その後は本来の秋田犬の姿を取り戻しつつあります。

小型犬全盛の昨今
肩身が狭い大型犬

 2000年代前半ごろは、日本人が飼育する犬の品種のうち、大型犬が1種や2種は上位5位以内にランキングされていました。しかし、2020年代の現在はトイプードルやチワワをはじめとする小型犬が全盛の時代を迎えています。飼う側の人間からすれば、餌が少なくて済む、たとえ噛まれてもけがをしにくい、それに狭い室内でも飼えるといったことが理由で、小型犬に人気が集まっているのでしょう。

 一方の大型犬は、基本的に力持ちですから、優しい性格のもち主が多いといっても、しつけられていないと人間を振りまわすおそれはあります。飼い犬としては小型犬よりも手間を要するということから、近年の人びとの生活形態とも相まって、避けられる傾向にあるのでしょう。大型犬は最近の飼育犬種の10位以内に入っていません。