<正解>
 多く勝ったのはA

 何から考えていけばいいのか、とっかかりすら見えませんが、そこに気づけるかどうかがこの問題の最大のポイントです。

問題文に書かれていないヒントを読み解く

 この問題のポイントは、「隠れたヒント」を見つけることです。
 それが見つかるのは、この部分。

 “あいこには一度もならなかった。”

 ここから、ひとつの法則が導き出されます。
 それは、相手はかならず、自分が出した手とは違う手を出しているという事実です。
 つまり、

 Aがグーを出したとき、Bはかならずチョキかパーを出している。
 Aがチョキを出したとき、Bはかならずグーかパーを出している。
 Aがパーを出したとき、Bはかならずグーかチョキを出している。

 ということです。

「手を出した回数」に注目

 Aが出した手に対して、Bが出した可能性のある手がわかりました。
 たとえばAがグーを出したとき、Bはチョキかパーを出しています。
 つまりAがグーを出した3回のうち、Bは「3回ともチョキ」「1回はチョキで、2回はパー」「2回はチョキで、1回はパー」「3回ともパー」の可能性が考えられます。
 でも、ひとつずつパターンを検証していくのはかなり大変……。
 そこで、じつはもっと簡単に正解を見つける方法があります。
 Bの出した手が特定できなくても、勝敗が特定できる組み合わせに着目すればいいのです。
 それは、

 Aが出した手と、Bが「出したと思われる手」の回数が同じときです。

 Aがチョキを出した回数と、Bが出したグーとパーの合計数はどちらも6回。
 つまりAが6回チョキを出したとき、Bがグーを2回、パーを4回出していたと確定します。
 よってAがチョキを出した6回の戦績はAの4勝2敗だとわかります。

おのずとわかる対戦結果

 これでBがグーかパーを出したときの勝敗はすべてわかりました。
 そして残りの勝負でBが出したのは「チョキ4回」というのもわかっています。
 それに対しAはグーを3回、パーを1回出しています。
 つまり、残り4回の戦績はAの3勝1敗になります。
 よって、最終的にはAが7勝3敗で勝ちました。

「思考」のまとめ

 サラッと書かれている「あいこには一度もならなかった」という情報をヒントにして、解決の糸口を探していくのがポイントでした。
 そこから、「自分が出したのと違う手を相手は出している」「Aがチョキを出した回数と、Bがグー、パーを出した回数が同じだ」と気づけたはずです。
 与えられた情報から他に何がわかるかを考えることで、はじめて見えてくる真実もあるということですね。

 ・いっけん手がかりにはならない情報も、「そこからさらにわかること」を考えてみると解決のとっかかりが見えてくる

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター
論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者。ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。