11月12日、NTTドコモは、インド最大のタタ財閥傘下の携帯電話会社タタ・テレサービシズに対して、NTTグループ全体で見ても“過去4番目”となる2640億円を投資するとブチ上げた。

 今回のプロジェクトは、社内で「タイガー」という暗号名で極秘裏に進められた案件で、今春にNTT(持ち株会社)の三浦惺社長が「中期経営計画」で述べた“海外投資再開”の切り札でもある。

 確かに、人口11億人を超えるインドは毎月800万~1000万人単位で加入者が増え続けており、これから3G(第三世代携帯電話)に移行することを考えれば、成長力の高さは明白である。

 だが、振り返ってみれば、ドコモの海外投資は失敗の連続である。たとえば、2000年に4090億円を投じたオランダのKPNモバイル、1860億円を投じた英国のハチソン3G、そして01年に1兆2000億円を投じた米国のAT&Tなどは、すべて撤退した。世界的なITバブルの崩壊が原因とはいえ、差し引きで約1兆5000億円の大損失である。

 かたや、3.9Gへの移行で設備増強を控えるKDDIや、1兆円を超す借金を抱えるソフトバンクには、海外に出る余裕がない。その意味では妬みも混じるのだろうが、聞こえてくるのは「過去にも同じことを言って失敗した」「通信は国の安全保障にかかわる分野なので、政府に左右される。
日本と同じく、それもゼロからできると思うのは大間違い」「コンサルティング会社の言うなりでは?」などと、手厳しい評価ばかり。

 ドコモ関連会社のある幹部は、こう内情を明かす。「国内は成長に限界があるので、インドなどの新興国に足場が必要だった。2000年頃にソニーや旧KDDから大量に中途採用した“海外組”を維持するために、夢ある大きな仕事が必要だったという理由もある」。

 実際、今回の件で中心となっているのは、海外で「iモード」を販売する部隊を解散し、あらためて7月1日に発足した国際事業部の面々だ。同部を束ねる国枝俊成・執行役員は、「iモードを持っていければ、彼らの企業価値を向上させられる」と大見得を切った。はたして、“江戸(先進国)の敵を長崎(新興国)で討つ”となるか。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 池冨 仁 )