英国には国賓訪問にこだわらず
短時間のお見舞いで訪問がいい

 そんなわけで、晩年のエリザベス女王が天皇、皇后両陛下の訪英を招待され、それを受けたというのは、レシプロシティー(相互性)の原則からは外れるが、仕方ないことだった。

 しかし、エリザベス女王が亡くなり、両陛下が国葬に参列のために訪英されたのだから、新国王ご夫妻には、ぜひとも、国賓として訪日いただき、エリザベス女王訪日の時に負けない大歓迎を両陛下と国民がさせていただき、その後に、それと対等の扱いをすることを条件に、訪英されるのが両国の皇室・王室の関係を深めるためにはいいのではないかと提言し、私から駐日英国大使に訪日を先行することのメリットを説明したこともある。

 チャールズ国王とカミラ王妃にとっては、来日されたら上皇ご夫妻からアドバイスを受けることも有益なはずだ。だが、チャールズ国王ががん治療に入られて、当面のあいだ、長期間の外遊は難しい状況なので、両陛下の訪英が先行するのも仕方ないかと思う。

 いずれにせよ、チャールズ国王の病状次第では、両陛下が訪英されてもチャールズ国王がお出ましになる行事は少なくなるとみられるため、英国人と世界に対し、日英の皇室・王室の深いつながりを印象づけるためには、よほどの上手な演出が必要となる。

 また、キャサリン妃も歓迎行事に参加できるかどうか微妙なため、チャールズ国王とカミラ王妃、ウィリアム皇太子とキャサリン妃のどちらとも、家族そろっての充実した交流が可能な状況にはない。

 国賓訪問は一度したら、次は20年くらい後でないとできないものだ。それだけに、せっかくの機会をこういう中身の薄い交流しかできない状況で使ってしまうのはもったいない。

 むしろ、とりあえずは、令和の即位礼に国王(女王)自身が出席されたほかの欧州諸国への答礼となる公式訪問を先行されて、英国には短時間、お見舞いに立ち寄られ、チャールズ国王が回復されたら、最初の大きなイベントとして訪日いただくようにお招きする方が、いいのではないか。

 そういう配慮は、宮内庁も外務省もいろいろ考えているだろうから、チャールズ国王の病状もにらみ、調整がされていることと思う。