自己啓発のセミナーや本では、「笑顔を絶やさず」「感謝を忘れず」など心がけを変えれば状況は好転する、と主張するものもありますが、そのように個人に視線を向けることで、本当の問題が見えなくなることもあると知っておきましょう。
抜け出すための考え方は
仮面としてのポジティブ
特定の組織や集団が持つ同調圧力であれば、その場から脱出することができます。でも「ポジティブじゃないと」という圧力は、特定の組織を超えていたるところに広がっており、就職活動で、仕事で、支援を受ける場面で、友達や恋人との関係においてさえ、存在しています。それは外側から強制されるだけでなく、自己の内側から「そうしなければ」と思わされる点で外部がなく、逃れることができません。では、どうすればいいのでしょうか。
「逃れられないけれども仕組みを知っておき、何が起こっているのか言葉で理解できるようにしておく」というのがひとつの対応になりうるとわたしは思います。就職試験や顧客と会うときなど、「ポジティブな人」が求められる社会的場面では戦略的にそれを装うけれども、「ポジティブでなければ価値がない」と素で信じるのではなく、特に必要がないときには、そうした態度からあえて距離を置くのです。
そうすることで、仮面をかぶってこの社会をしたたかに生き抜きながら、自己の内面の自由まではゆずりわたさずに済ませることができます。そして、ここぞというときには、他者や社会に働きかけて既存のあり方を変えていけるよう、ちからを蓄えておくのです。
「わたしの態度がポジティブになっても、この問題は解決しないんだよ」
シーン(22)であればそういって、問題の所在を個人から職場へ、ひいては社会へと向け変えていくことを目指してもいいかもしれません。