会社から独立してからしばらく、何もかもひとりでこなしていました。仕事はもちろんのこと、経理やホームページの制作まで、全部ひとりで行っていました。

 そのときの私が考えていたのは、「誰かに相談したって、この仕事のことをわかってくれるはずがない。私がやるのが、いちばんクオリティが高いはず」ということ。

「自分はなんでもできるんだ!」と証明してみせたかったのかもしれませんね。結果、すべて抱え込んでパンクしてしまいました。さらには何もかも中途半端。

 この経験を通して、人に頼ることの大切さがよくわかったのです。

 自分ひとりでやりたい気持ちもよくわかります。でも、ちょっと人の知恵や力を借りるだけで視野が広がり、発想が豊かになり、選択肢も増えるものです。

 とはいえ、相談を遠ざけてきた人がいきなり相談しようと思っても、すぐに行動を変えるのは難しいかもしれません。

 そこで取り入れてほしいのが、「スモールステップ」という行動の取り方。目標までの道のりを区切って、小さな一歩から始めることです。

 例えば、泳いだことのない人が「50m泳げるようになりたい」という目標を掲げたとします。いきなり50m泳ぐのは無理ですから、少しずつ練習を積み重ねていきますよね。

 最初は水に顔をつけることを目標にします。それができたら、次は浮くことを目標にします。

 そうして一歩ずつクリアしていけば、やがて50m泳げるようになるのです。

 いきなり大きな目標を立てる人は少なくないのですが、それでは達成が困難になり、モチベーションも続きません。

 そんなときは、目標までの道のりを細かく分けて、ひとつずつクリアしていくのです。相談も同じ。小さなことから相談することに慣れていくのです。

書影『仕事で悩まない人の相談力』(WAVE出版)『仕事で悩まない人の相談力』(WAVE出版)
船見敏子 著

 最初のステップとして、小さな疑問点を人に聞いてみるのはどうでしょう?

 例えば、「集中力が高まる色って何色なんだろう?」など、ふと疑問が湧いて調べようと思ったことを、人に聞いてみるのです。ささいなことほどいい実験材料になると思います。

 相手は、「青だよ。青はリラックス効果もあるから集中力が長く続くんだって」など、情報提供してくれるかもしれません。あるいは、「どうしたの? 何か集中したい大事な作業があるの?」と返してくれて、思わぬ会話に発展するかもしれません。

 小さなことを相談したら、誰かが力になってくれた。自分ではわからなかった解決策を提示してくれた。そんな経験が次の相談を生みます。