「圧倒的に面白い」「共感と刺激の連続」「仕組み化がすごい」と話題の『スタートアップ芸人 ── お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』著者・森武司氏は、2005年の創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円となった。ここまで会社を成長させてきた秘密は何か? 本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回インタビューするのはFIDIA役員の高橋良巳氏。野村證券の国際金融部門、ソフトバンク・ファイナンス・コリア、SBIコリア社長、SBIホールディングスの取締役執行役員を歴任し、本書でも「狙うは孫正義氏、北尾吉孝氏から絶大な信頼を得た男」として登場。現在、ベンチャー企業への投資をメイン事業とする「グローバルフロントインベスメント」の代表を務めている。そんな高橋氏は『スタートアップ芸人』をどう読み解いたのか。今回は「投資家目線で大切にしていること」を聞いた。
「三方よしの理論」の考え方
――投資の専門家でもある高橋さんにお聞きしたいのですが、『スタートアップ芸人』には「顧客目線、社員目線、投資家目線のビジョン」という話が登場します。顧客・社員・投資家の三者が納得できるビジョン・ミッションが“三方よし”で、目指すべきところであると。この点について、どんな感想を持たれていますか?
高橋良巳(以下、高橋):三方よしの理論は「言うは易し、行うは難し」の典型的な例です。
ですから、実際のところは三方よしを掲げつつも、目先の利益にフォーカスした、「二方よし、あるいは一方よし」の企業が多いように思います。
しかし、そのような近視眼的なやり方では、一時的にはうまくいっても、いずれ業績が伸び悩んでくるでしょう。
コロナ禍以降は、特にそういった流れが顕著になっているように感じます。
本書には、「ワクワクする友だちと、ワクワクする事業で、ワクワクする世界を」と、それぞれ具体的な「三方よし」が述べられていますが、実現するには何が必要でしょうか。
僕はつまるところ「誠実さ」ではないかと思うのです。
これからの時代のキーワードとは?
――具体的に「誠実さ」とは?
高橋:まずは企業のトップの資質としての誠実さが重要です。
僕は投資家としてさまざまな企業の栄枯盛衰を見てきましたが、FIDIAに入ろうと思ったのは、今後も成長する企業だと確信したからです。
そのときの判断基準が社長の資質でした。
社長に必要な資質には、決断力、行動力、先見性、誠実さなどたくさんあります。
誠実さというと、抽象的で、きれいごとを言っているように思われるかもしれません。
でも、最近のビジネス現場ではリーダーや管理職に求められる資質として、誠実・高潔・真摯を意味する「Integrity(インテグリティ)」という言葉が注目されています。
社長がどれほど才気に溢れた人物でも、言動に誠実さがなければどうなるでしょう。
従業員はもちろん、顧客、取引先、投資家などあらゆるステークホルダーに信用されなくなるでしょう。
結果、企業成長は阻まれ、インテグリティが欠けた組織は社内の風通しが悪くなり、人間関係がギクシャクしてしまうのです。
――本書にも「従業員同士の悪口・陰口に悩まされた」という話がありますが、最終的には「悪口、陰口はカッコ悪い」という風土が浸透したそうですね。
高橋:はい。まさに森社長や役員たちの資質がそうさせたのだと思います。
FIDIAには2500人以上も社員がいます。そうした環境では、インテグリティという概念がより重要になってきています。
これは規模にかかわらず、どの企業でもこれから重視すべきことになるでしょう。
そして、最も重要なことは、各部署のリーダーやマネジメントを担う人たちはもちろん、社員全員にその行動規範を浸透させることです。
そもそも「三方よし」は、誠実さや互いの信頼関係が土台になっていますから。