この研究、サンタクロースという「短期間に非常にたくさんのひとと接する異常なまでに“社交的”なひと」がいたとして、それが公衆衛生に与える影響を定量化したということが評価され、きちんとした国際医学誌に論文が掲載された。なんとイグノーベル賞の候補にもノミネートされたのだが、残念ながら受賞には至らなかった。

対策が不十分という
WHOの訴えは本当か

 つぎに、二つ目の研究紹介。Neglected Tropical Diseases(NTD、顧みられない熱帯病)という言葉を聞いたことがあるだろうか。主に熱帯地方でみられる風土病で、多くの先進国が位置する温帯地方では問題となっていないために対策があまり進んでいない疾患を指す言葉だ。

 WHOなどがこのような病気のリストを公開していて、さらなる対策の必要性を訴えている。

 そこで、NTDは本当に注目されておらず対策が不十分なのかどうかを調べてみることにした。そうはいっても、もし困っているひとがほとんどいないのであれば注目度が下がるのも当然だ。まずはそれぞれの疾患がひとびとの健康をどれだけ損ねているのかを「DALY」(障害調整生存年 Disability-adjusted Life Year)と呼ばれる指標で評価することにした。

 病気のインパクトを測るには、死亡者の数が一番わかりやすいと思う。たとえ死亡しなくても、病気になって働けない状態になってしまったら、それも大きな痛手だ。そのあたりを加味してさまざまな病気のインパクトを定量化したものがDALYだ。

 疾患が無視されているのかどうかはどうやって測ろうか。これに関しては、それぞれの病気に関する論文がどれだけ出版されているのかを数え上げることで、研究者からの注目度を測る指標とした。そして、さまざまな感染症においてDALYに応じて十分な論文が出ているのかどうかを解析することで、相対的な注目度ランキングを作成したのだ。