コロナ禍による在宅勤務や生活スタイルの変化などにより、若い人たちの間でつみたてNISA口座を開設する動きが急増。2024年からは新NISAがスタートした。新NISAはこの9本から選びなさい』(中野晴啓著、ダイヤモンド社)の内容から一部を抜粋・公開してきた本連載。その特別編として、なかのアセットマネジメント 代表取締役社長の中野晴啓さんに「投資に関する素朴な疑問や、新NISAを使って具体的にどうお金を増やしていったらいいのか」について、Q&A方式で答えていただいた。新NISAを使って投資や資産形成を始めてみたいという人に向けて、そのポイントをわかりやすく紹介していく。(構成:鈴木雅光、撮影:石郷友仁)

【投資のギモンQ&A】新NISAで1800万円の非課税保有限度額が埋まった後はどうすればいいですか。ポートフォリオの見直しやリバランスなどを検討する必要はあるのでしょうか?Photo: Adobe Stock

――1800万円の非課税枠が埋まった後はどうすればいいですか。ポートフォリオの見直しやリバランスなどを検討する必要はあるのでしょうか?

【投資のギモンQ&A】新NISAで1800万円の非課税保有限度額が埋まった後はどうすればいいですか。ポートフォリオの見直しやリバランスなどを検討する必要はあるのでしょうか?中野晴啓氏:なかのアセットマネジメント 代表取締役社長

中野晴啓 新NISAの非課税保有限度額が1800万円だからといって、投資に回す金額を1800万円に限定する必要は全くありません。この点は、何となく誤解している方もいらっしゃるようですが、新NISAの非課税保有限度額を満たした時点で投資は終わり、ではないのです。

 非課税保有限度額である1800万円を満たすのは最低条件です。そこから課税口座を用いて、さらに投資金額を積み上げていってはどうでしょうか。

預金に置いていてもお金は増えないし、
インフレで目減りする

 いろいろな方にお会いして話をすると、結構な金額を預金に置きっぱなしにしている人が結構いらっしゃいます。それこそ大手銀行の定期預金口座に5000万とか、1億円くらいの資金を眠らせているのです。

 正直、預金に1億円も置いておく必要はありません。

 預金は、いざという時に現金を引き出すためのものです。特に昨今のように、超低金利でインフレが加速しているような経済環境のもとで、必要以上に大きな金額を預金に預けっぱなしにしておくと、資産価値はどんどん目減りしていきます

 もちろん最適解などというものはありませんが、私がもし1億円の現金の置き場所を考えるとしたら、このうち、急に現金が必要になった時の備えとして、とりあえず預金に1000万円程度を預金にしておき、残りの9000万円は投資に回します。さすがにそれは怖いというのであれば、2000万円を預金にして、残りは投資に回すでしょう。

 仮に2000万円を預金にするとしたら、残りは8000万円です。このうち1800万円を新NISAの口座で運用するとしたら、それ以外の6200万円は課税口座での運用になります。

世界中の株式市場に分散投資する投資信託を
1本選んで、運用する

 では、課税口座の6200万円を何で運用するか、ですが、よく金額が大きくなると、誰もがさまざまな金融資産に資金を分散したがります。

 でも、これはほとんどの場合において間違いです。複数の投資信託に分散したのに、フタを開けてみたら、どれも似たような資産クラスに投資するものだったというケースが、往々にしてあるからです。

 こうした分散投資のワナ的なものにはまるくらいなら、最初から世界中の株式市場に分散投資するタイプの投資信託を選び、新NISA口座でも、課税口座でも、同じ投資信託で運用していけばいいのです。

 そのほうがシンプルですし、そもそもその投資信託が世界中の株式市場に分散投資しているのですから、十分な分散投資効果が期待できるはずです。

 ちなみに、リバランスなどポートフォリオの見直しについてですが、もし十分な分散が行われている投資信託を購入したのであれば、自分でポートフォリオの調整を行う必要は一切ありません。何もしなくても、運用会社が常時、投資先をチェックして、その時々の環境に応じて組入銘柄の見直しを図っているからです。

 こうした点からも、いたずらにさまざまな資産クラスに分散させるのではなく、十分な分散投資効果が期待できそうな1本の投資信託と、長く付き合っていったほうがいいと思うのです。ただし、長期にわたり付き合っていく投資信託だからこそ、自身が納得して信頼の置ける運用会社や運用者を見つけだすことが何より大切なことです。

 それと私自身は、なかのアセットで国際分散型の株式ファンドと共に、日本の優良企業を支えていく日本株のアクティブファンドを立ち上げました。それは私たち日本で生きて行く者として、世界の経済成長でお金を育てると同時に、この先の日本経済を再び元気にして行きたいとの共通意志を込めた長期投資を皆さんに実践して行きたいからです。長期投資はお金を通じた未来への意志表示でもあるのです。

【答え】
 十分な分散投資効果が期待できそうな1本の投資信託を選んで、長く運用する。自分でポートフォリオの調整を行う必要はない。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
なかのアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1987年明治大学商学部卒業。セゾングループの金融子会社にて債券ポートフォリオを中心に資金運用業務に従事した後、2006年セゾン投信株式会社を設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任、2023年6月に退任。
2023年9月1日なかのアセットマネジメントを設立。
全国各地で講演やセミナーを行い、社会を元気にする活動とともに、積み立てによる資産形成を広く説き「つみたて王子」と呼ばれる。公益社団法人経済同友会幹事他、投資信託協会副会長、金融審議会市場ワーキング・グループ委員等を歴任。
著書に『最新版 つみたてNISAはこの9本から選びなさい』(ダイヤモンド社)他多数。
なかのアセットマネジメント:https://nakano-am.co.jp/