もちろん筆者にも、自立支援・就労支援・生活保護以前の段階でのセーフティ・ネットの充実の必要性は理解できる。しかし、経済的自立や就労は、時代の流れや経済状況の影響を大きく受ける。セーフティ・ネットを拡充し、機能させるためにも、一定の社会保障予算が必要だ。そして筆者は、現在の社会保障予算は、まったく足りていないと考えている。生活保護費予算は、10兆円や15兆円であっても、少なすぎるということにはならないのではないだろうか?

 しかしながら、今回の会議は、国家予算の大枠についての議論を行う場でもなければ、予算に関して権限を持っている人々の集まりでもない。

なぜか強調される
「不正受給」対策

 今回の課長会議で、生活保護に関する今後の方針として示されたのは、

1.生活保護法改正
2.「生活支援戦略」を実現するための新法
3.生活保護基準の見直し

 であった。どれも問題や丁寧に議論されるべき論点を含んでいるけれども、ここでは、不正受給対策が非常に強調されていたことについて述べておきたい。

 資料には、「7 不正事案の告発等について」という章がある。4ページの短い章ではあるが、不正受給の問題を非常に重く見ていることが分かる。古川氏によれば、

「支援が必要な人には支援を行うためにも、支える側への納得が必要です。そのことが、制度の信頼、制度の維持につながります」

 ということであった。

「だから、小野市の条例案のようなものが、市民の相互監視や密告が必要なのだ。お笑い芸人の母親の生活保護受給のような問題に対策するために、扶養義務強化が必要なのだ」

 と考える前に、この資料で何が問題視されているかを見ていただきたい。

 資料70ページには、まず、

「不正受給件数は増加傾向にあるが、告発件数は低調」

 という現状認識が示されている。筆者はこの現状に疑問をもっている。この資料70ページには表があり、平成17年~22年の5年間での不正受給件数・金額・告発件数が示されているが、1件あたりの金額は、平成17年より22年の方が低いのである。このことからは、金額の大きな不正受給が増えたのではない可能性、「100円玉を拾ったけれども申告しなかった」といった軽微すぎる不正が多く含まれている可能性、「生活保護世帯の子どもが収入申告義務を知らずにアルバイトしていた」など悪質性が極めて薄い事例を不正受給とした可能性などが考えられるが、資料を読み進めてみよう。