変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)でIGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていくこれからの時代。組織に依存するのではなく、私たち一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルになることが求められる。本連載の特別編として書下ろしの記事をお届けする。
コミュニケーションの進化とその影響
Eメールが発明されたことにより、私たちは相手の時間を気にせず、いつでもメッセージを送ることができるようになりました。これによって、公私あわせて1日に何十通ものメールを送受信することが、今や当たり前になっています。
たしかにEメールは非常に便利な通信手段ですが、その使い方次第でコミュニケーションの質が大きく変わることもあります。特にビジネスの場では、如何に効果的にメールを活用するかが、成功へのカギとなっています。
皆さんの多くが、自社の製品やサービスを宣伝するために、顧客に対してメールを送るという経験をしたことがあるかと思います。逆に、営業メールを受け取ることもあるでしょう。そのときに、顧客のアポを取れる人とアポがなかなか取れない人がいます。その違いはどこにあるのでしょうか。
コミュニケーションの効率化
多くの人が陥るのが、情報過多のメールです。売りたい商品やサービスについての宣伝ばかり長々と書いてあり、顧客にとってのメリットや次のアクションが書かれていないため、次につながりません。
一方で仕事ができる人は、1回の簡潔なメッセージのやり取りで完結できるようなメールを送っています。顧客にとってのメリット、アポの候補日程まで書かれているので1往復でやり取りが完結します。一目で内容を把握しやすい簡潔なメールは、顧客を返信や次の行動へと促します。顧客が必要とする情報や次のステップに焦点を当て、余計な情報は省くことが肝心です。
また、メールの件名には目的を明確に記載し、受け手がメールの優先度を判断しやすくします。このように、メールの件名と内容の両方で情報を明確にすることで、受け手は必要な行動を迅速に取りやすくなります。
アジャイル仕事術を活用したメール戦略
顧客の時間は限られており、長々としたメールは効果的ではありません。顧客側の意思決定者は日々、数百通を超えるメールに加えて、SNSなどでもたくさんのメッセージを受け取っていることを忘れてはいけません。
アジャイル仕事術では、俊敏力を上げるために、具体化する力を高めることを目指します。効果的なメールは、受け手に期待するアクションを明確にし、具体性をもって伝えること、受け手に不要な情報は含めないことが大切です。
これにより、メールの効率が大幅に向上し、受け手は必要なアクションを明確に理解し、お互いがアジャイルに次の行動へと移ることができるようになるでしょう。
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)が初の単著。