相鉄・東急新横浜線開業で
対応が分かれた西武と東武

 コロナ禍には直接関係しないが、2022年3月の相鉄・東急新横浜線開業に伴うダイヤ改正でも西武の特色が出た。同じく副都心線に直通する東武東上線が新横浜線直通列車を設定した一方、西武は静観したのである。

 西武は「西武線沿線からの相鉄・東急新横浜線方面へは、横浜駅方面と比べ、利用が少ない」とした上で、「以前は、JR新横浜駅へは東急東横線菊名駅において一旦改札の外に出てJR横浜線に乗り換えていたものが、開業後は東急東横線武蔵小杉駅などで新横浜駅方面の列車に階段や改札などを使わずに同一ホームで乗り換えが可能となり、新横浜駅方面へのアクセスが向上した」として、直通運転を行わなくても利便性は確保できると判断した。

 新横浜駅直通というシンボル性を重視した東武と、実効性を重視した西武。どちらが正しいというわけではないが、少なくともダイヤの複雑化を避け、大枠を維持するという西武の判断は、コロナ禍への対応と一致する。

 どのような価値判断でダイヤ改正を行っているのか、担当部門に対面取材したいと西武に打診したが、さまざまな利害がからむダイヤ改正について個別の話はしにくいとの理由で実現しなかった。

 ただ、コロナ以前と以後でダイヤ改正の考え方に変化はあったのかという問いに対しては、「基本的な考え方は変わっていないが、コロナ禍により、利用者の生活・行動様式は変化している」として、「快適に利用したい」との要望に応えるため、特急列車や座席指定列車の拡充に力を入れているとの回答があった。

 おそらくどの事業者に聞いても同じような答えが返って来るだろうが、その結果として完成したダイヤには各社の色が出るのだから面白い。

 輸送人員と運輸収入が回復傾向にあるとはいえ、鉄道事業の収支が悪化したことは間違いない。今後の人口減少まで見据えれば、ダイヤに手を入れる姿勢を見せなければ株主、投資家に顔向できないという事情もあるだろう。

 とはいえ、鉄道は営利事業であるとともに公共交通である。資本側の都合を利用者に一方的に押し付けるのは「フェア」とは言えない。本連載でもたびたび指摘してきたように、大きな変化においては事業者と利用者が一定程度、利益を分け合うのでなければ、納得感は得られない。そういう意味で、西武のダイヤ改正は利用者に対して一定の説得力を持っていると言えるだろう。

 各社のアフターコロナ観が反映される来年、再来年のダイヤ改正がどのようなものになるか注目したい。