「次の日まで口の中にベトベト残るラーメンを」

「分量の配分も適当だし、豚肉なんて赤字だけどアバウトにやっています。次の日まで口の中にベトベト残るようなそんなラーメンを目指しています。うちは、ラーメンの東スポ(娯楽性を重視した大人気新聞、東京スポーツのこと)なんですよ。新聞の形をしているけれど中身はぜんぜん違う」

「二郎のラーメンは、10人中全員に大好きと思われる必要はない。2割ぐらいの人が手を挙げてくれればいいな、と考えています」

 ということだった。このことはさきほどの経営学者・牧田氏の指摘とも合致する。あえて「次の日まで口の中にベトベト残るようなそんなラーメンを目指しています」というのだから、「一般人好み」のラーメンを狙っていないのは明白だろう。デートコースには絶対に選ばれないラーメン屋を目指すことで、究極の差別化ができあがったということだ。

 他者がマネできないようなオリジナリティーこそが、ラーメン屋の繁盛の秘訣ということだ。現在の多くの飲食店が犯している過ちは、数値管理を過信し、お店の魅力を自分で殺してしまっていることではないだろうか。どう考えても利益を圧迫する二郎のボリュームに、学ぶべきことは多い。