価値観が多様化し、先行き不透明な「正解のない時代」には、試行錯誤しながら新しい事にチャレンジしていく姿勢や行動が求められる。そのために必要になのが、新しいものを生みだすためのアイデアだ。しかし、アイデアに対して苦手意識を持つビジネスパーソンは多い。ブランドコンサルティングファーム株式会社Que取締役で、コピーライター/クリエイティブディレクターとして受賞歴多数の仁藤安久氏の最新刊言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』は、個人&チームの両面からアイデア力を高める方法を紹介している点が、類書にはない魅力となっている。本連載では、同書から一部を抜粋して、ビジネスの現場で役立つアイデアの技術について、基本のキからわかりやすく解説していく。ぜひ、最後までお付き合いください。

チームのアイデアが出やすくなる、適正な人数とは?Photo: Adobe Stock

チームとしての相乗効果を
どう出せるのかを考える

 アイデアをチームで生みだすとしたら、どれくらいの人数で考えるといいのでしょうか。また、アイデアの集め方や出し方は、どんなやり方がいいのでしょうか。

 まず、人数について考えていきましょう。

 最少の人数としては2人から、となります。2人だったり、3人だったりという小さな人数のときは、どうチームとしての相乗効果を出していくのかを意識しましょう。

 たとえば、私がメーカーの新規事業開発のプロジェクトを担当したときには、2人ずつに分けた8つのチームをつくりました。そして、それぞれのチームのバディ(メンバー)を開発のセクションなどにいるメンバーや営業などにいるメンバー、という職種や専門分野の異なる組み合わせにしました。

 このプロジェクトのオリエンテーションにおいて「立場が違うことから双方が妥協してアイデアをすり合わせるのではなく、自分の立場を全面的に表に出して、議論するようにしてください」と伝えました。

 エンジニアとマーケッター、それぞれの立場からアイデアをぶつけ合い、磨いていくことがユニークな新規事業開発につながっていくのでは、という狙いがありました。

 もちろん、これはひとつの例です。

 この企業は、開発の部署の中で事業開発のプロジェクトをたくさん行ってきた経緯があり、全社的にも事業プランコンテストが行われているということがあったので、私が担当したプロジェクトは違ったアプローチをとったわけです。

 というわけで、少人数においても、同じ部署、同じメンバーであっても、もちろん大丈夫です。

 しかし、その場合にも「どうチームとしての相乗効果を出すのか」ということは、意識したいところです。

ピザ2枚を分け合えるくらいの人数が
チームとして最適

 では、チームの人数の上限はどこまでと考えるのがいいのでしょうか?

 アマゾンのジェフ・ベゾスが言っている「ピザ2枚の法則」というものがあります。ピザ2枚を分け合ってちょうどいいくらいの人数がチームとして最適であるというこの考え方は、アイデアをチームで生みだすときにも参考になるものです。

 アイデアをチームで出すときに、いちばん避けなければいけないのが、メンバーが慎重になって、自分の身を守るようになることです。たくさんの人の前では発言に気を使うし、失敗したくないと思ってしまう。賢さを演じてしまうようなことも、会議の人数が増えるからでしょう。

 そういう意味では、多くても8人。理想を言えば、5人程度の会議体で進められるのがよいと考えています。

 私の経験則ですが、これ以上になると会話自体も堅苦しくなるし、会議体の中で自分の役割を見出そうと、それぞれが勝手に動き、アイデアを出すということへのコミットメントも薄れてしまいます。

(※本稿は『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』の一部を抜粋・編集したものです)

仁藤 安久(にとう・やすひさ)
株式会社Que 取締役
クリエイティブディレクター/コピーライター
1979年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
2004年電通入社。コピーライターおよびコミュニケーション・デザイナーとして、日本サッカー協会、日本オリンピック委員会、三越伊勢丹、森ビルなどを担当。
2012~13年電通サマーインターン講師、2014~16年電通サマーインターン座長。新卒採用戦略にも携わりクリエイティブ教育やアイデア教育など教育メソッド開発を行う。
2017年に電通を退社し、ブランドコンサルティングファームである株式会社Que設立に参画。広告やブランドコンサルティングに加えて、スタートアップ企業のサポート、施設・新商品開発、まちづくり、人事・教育への広告クリエイティブの応用を実践している。
2018年から東京理科大学オープンカレッジ「アイデアを生み出すための技術」講師を担当。主な仕事として、マザーハウス、日本コカ・コーラの檸檬堂、ノーリツ、鶴屋百貨店、QUESTROなど。
受賞歴はカンヌライオンズ 金賞、ロンドン国際広告賞 金賞、アドフェスト 金賞、キッズデザイン賞、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品など。2024年3月に初の著書『言葉でアイデアをつくる。 問題解決スキルがアップ思考と技術』を刊行する。