トリムレベルが3タイプあるうちで、最初に導入されたのは最上級ULTRAのシングルモーター(後輪駆動、RWD)。航続距離は560kmと長く、価格は559万円に抑えられており、装備は充実している。
外見はBセグメントとは思えないほど立派だ。小さなSUVでありながらパワフルな大型SUVのような存在感があり、ひと目でボルボとわかる独自の個性を放っている。中でもフロント回りは印象的だ。空力を意識して低く抑えるとともにグリルレスとされ、新たにセグメントデザインを採用したトールハンマー形状のLEDヘッドライトを採用する。BEVらしくシンプルで先進的。足回りもたくましい。このクラスは17インチが一般的だが、標準で19インチを装着。試乗車はオプションの20インチだった。5スポーク形状のアルミはスタイリッシュだ。
プロポーションは全長が短いわりにホイールベースが長く、最新ボルボ共通のエレガントなフォルムを受け継いでいる。後席を含め十分な広さの車内空間と荷室が確保されている点も特筆できる。
インテリアには持続可能性を意図したマテリアルがふんだんに用いられていた。ノルディコというコルク、松脂、再生PETから生成された素材が見せる他にはない新感覚の質感が目を引く。スクエアな形状のステアリングホイールは、視界と乗降性の向上に貢献する。
多くの機能を中央に集約する工夫で、製造時のエネルギー消費とワイヤー類の使用量削減を達成した。たとえばドア側にパワーウィンドウ(PW)のスイッチや、オーディオのスピーカーは配されていない。
PWスイッチは室内中央にあり、スピーカーは、フロントスクリーンに沿って、ハーマンカードン製のサウンドバーが配されている。こちらの音質が想像以上に良好で臨場感がある点にも驚いた。
新しいインフォテインメントシステムには、ボルボがいちはやく導入したGoogleがビルトインされているが、カープレイは2024年内の対応になる。標準装備の大開口のパノラマガラスルーフにシェードがなくティンテッドガラスとされている点は北欧車ならではだろう。
実用性もハイレベル。車内の随所に使いやすいストレージが設けられているほか、フロントフードの下にもラゲッジスペースがある。クルマの3カ所に“エルク”が隠れているという遊び心も楽しい。
しっかりとした走りと鋭い加速を実現
RWDハンドリングも好印象
走りは想像以上の仕上がりで感心した。まずは速さだ。MAXで200kWと343Nmを発揮し、0→100km/h加速が5.4秒とデータは、このクラスの走り系ではないBEVで最強級。参考まで、0→100km/h加速は同クラスでは7~8秒台が一般的だ。
静かで滑らかなのはもちろん、瞬発力があり、車速が高くなってからもあまり頭打ちになる印象がない。さすがはが5.3秒の実力だ。
半面アクセルレスポンスが元気すぎ、駐車時などの細かい動きではもてあます面もある。そのあたりは関係者も認識しているようだ。しっかり煮詰めてOTAでアップデートされるはずだ。