「現代では、あらゆる分野で消費者の嗜好が多様化しており、大手メーカーのマスな定番商品がひとつあればいいという時代ではなくなりました。こだわりが強く、商品のバックグラウンドやコンセプトを意識する消費者も増えています。彼らにとって、作り手の顔が見えたり、こだわりが詰まっていたりするクラフト飲料は、多少価格が高くてもお金を払う価値のある商品になっています。『いいものを安く』という従来の消費スタイルから、『価値あるものにはきちんとお金を払う』という考えに移っている層がいるとも捉えられます」

消費者に刺さる「クラフト」
次なるブームは紅茶か

 一方、クラフト飲料は製造するメーカーにとっても、推し進めるメリットがあるという。

「手間暇かけたり、素材にこだわっているクラフト商品は、大量生産されたマスな商品よりも価格が高めです。そのため、マーケット的にも単価を上げられ、話題になったりリピーターが増えたりすれば、製造している中小企業も儲かります」

 また、市場開拓という意味でもクラフトというジャンルは有効なのだと渡辺氏は語る。

「ビールやコーラなど大手メーカーやブランドがすでに存在する市場に参入する際には、新しいジャンルを作って市場を拡大させる必要があります。そういった意味ではクラフトというくくりは新しいジャンルに見えるのです。そして、マスな商品に飽きていたり、こだわりが強かったりする消費者にクラフト商品は刺さるのです」

 これが当てはまる飲料のひとつが、まさに紅茶だという。

「紅茶市場は、コーヒーやビールなど他の飲料に比べて国内では規模が小さいです。よくコンビニの売り場は世間の需要の縮図と言われますが、実際、コンビニの飲料売り場を見るとコーヒーやビールに比べて紅茶は、種類も本数も圧倒的に少ないですよね。実際『午後の紅茶』しか置いていない店舗もあります。そのような市場では、なにかしらの新しいジャンルやブームなど、大きな話題がなければ、拡大は難しいです。そのため、クラフトという新しいジャンルを作ることは、紅茶市場を広げるためには理にかなっています」

 クラフトというジャンルは市場を変えていく力を秘めているのだ。事実、紅茶に注目する動きが現れている。