「現在、セブンイレブンは実験的に数店舗で『紅茶マシン』を導入しています。これは、従来のコーヒーマシンと同様にカップで紅茶が飲めるというもの。紅茶に注目する動きがでてきているのは事実です。ここにクラフト紅茶という別のブームが加われば、紅茶マーケットは拡大するかもしれませんね。国産の原料で、土地柄も打ち出せればクラフト紅茶も成功するかもしれません」
国産茶葉を使用した紅茶は「和紅茶」と呼ばれ、一定の人気を得ている。紅茶以外にも、クラフトになりえる商品はまだまだありそうである。
大企業によるクラフト商品は
クラフトと呼べるのか?
そもそも、クラフト(craft)とは、直訳すると「手作業で作ること、手芸品、民芸品、工芸品」という意味。それが転じて、クラフト商品の文脈では、手作り感やこだわり、地域性といったニュアンスで使われている。クラフトブームのメリットを述べつつも、渡辺氏は「クラフトの定義があいまいになってきている」と指摘する。
「地域性や手作り感があって、大量生産(マス)ではないというニュアンスが強いクラフト商品ですが、解釈の範囲が広いため定義がはっきりしているものではありません。販売する店や企業、そして受け手の解釈でニュアンスが変わるものとも言えますね。実際、企業の担当者にクラフトの定義を聞いても、どこかあいまいなコメントにとどまります」
そして、近年では「マスではない」という意味合いも形骸化してきたという。
「現在は大手メーカーの商品でも、クラフトと冠するものがあるため、クラフトはますます漠然としたワードになりつつあります。キリンが発売した『スプリングバレー』のラベルには『クラフトビール』と記載されていますし、BOSSも『クラフトボス』を発売しています。個人的には『マスな商品は、果たしてクラフトと呼べるのか?』という疑問も出ないわけではないです」
スプリングバレーやクラフトボスの商品説明によれば、原料へのこだわりや手間暇をかけている点において、クラフトと称しているようであるが……。
「もともと、大量生産商品へのアンチテーゼでもあったクラフト飲料ですが、それが現在は大手メーカーによって、大量生産されているという矛盾を抱えています。しかし、それほどクラフトというワードは市場にとって魅力的になり、一大ジャンルになったことの証左です。今後も嗜好の多様化は進みますから、大手や中小企業も含めてクラフト商品の発売がされていくでしょう。私のように細かいことは気にしない人が多いでしょうから、一定の人気ジャンルになると思います」
消費者としては新たなクラフト商品の登場を楽しみに待ちたい。