そんななか、2022年に新たに加わったのが、デジタルツールを活用した「スマート降圧療法」だ。
「スマート降圧療法とは、スマホアプリの『CureApp HT 高血圧治療補助アプリ』と医師の指導を通して、生活習慣の改善を目指す治療法です。アプリには、高血圧症に関する正しい知識が学べるコンテンツをはじめ、自身の血圧や食事内容を毎日記録する機能も搭載されています。アプリではありますが、承認申請のために実施した臨床試験において有効性と安全性が認められ、薬事承認・保険適用を受けた医療機器です。薬と同等とは言わないまでも、一定の効果が期待できるとされています」
同臨床試験では、アプリによる治療介入を受けた人は、脳心血管病のリスクが10.7%減という結果が得られているという(*)。
(*)…Kario K. Nomura A. Satake K. et al. A multicenter clinical trial to assess the efficacy of the digital therapeutics for essential hypertension: Rationale and design of the HERB-DH1 trial. J Clin Hypertens. (Greenwich) 2020;22(9):1713-1722
6カ月のプログラムで
生活習慣の改善をサポート
このアプリは、個人がアプリストアでインストールするものではなく、薬と同様に医師から“処方”してもらう。
「医師が処方したQRコードから、患者さん自身のスマホにインストールします。その後は、定期通院とアプリの利用を並行して治療を進めるのが特徴です。当院では、私から高血圧症の患者さんに『スマート降圧療法』を提案し、希望する方に処方します。スマホの操作が苦手だったり、インストールを忘れてしまったりする人もいるので、受付窓口で登録までサポートするように工夫しました。年齢にかかわらず『LINEなどのSNSを使用している』という人は、比較的スムーズに治療を進められる印象ですね。最高齢では84歳の方にも使っていただいています」
患者の基本情報をアプリに入力すると、6カ月に渡る「生活改善プログラム」がスタート。はじめの2週間は、患者自身が高血圧治療に関する正しい知識を得るための期間となる。