シンジ:だから僕はデザインも今は勉強してるから、じゃあインスタグラムに、結構毎日ぐらい、それなりにアップしてて。それで個人的にお金につながればいいなと思って。そしたら別にそれ続けながら、そっちでお金もらえてバンドを続けられるしって。だから今は一応、その、就職しないために、毎日デザインのほうでもちょっとお金になればいいなっていろいろ活動してる。

 カイも「普通に卒業して就職して家庭持って」という標準的ライフコースを、複数の理由を挙げて次のように批判した。

カイ:僕の偏見なんですけど、普通の企業に勤めます、月曜から金曜で休みは土日だけ、で、60歳で定年迎えます。そっから何ができるんだと思うんすよね。60歳までいかなくても、病気になって死ぬ人もいます。絶対死ぬ間際に後悔すると思うんすよ。ただ働いてしかないって。なんかそれが僕ちょっと怖いなと思って。だったらもう、リスク背負ってでも、たぶん人生なんてどうにかなると思ってるんで。最悪、後は自分が辛い思いして頑張るだけなんで。だったら一番若くて、何でもできるときにやりたいことを好きなだけやるほうがいいんじゃないかって。

 ほんと同級生とかみてると、子育てして鬱になる人もいますし。ある意味、人間の生き方って一般的、まあ一般的っていいたくないですけど、一般的な生き方って、普通に卒業して就職して家庭持って、っていうやつじゃないですか。それって僕、人間っぽくないと思ってんすよ。なんか宗教じゃないですけど、ちょっと怖いなって思うときがあって。まあそりゃ安定はあるかもしんないすけど、自分の自由を捧げてまで、そんなに将来って不安なのって。流れが怖いですよね、卒業してとりあえず就職するみたいな。

 こうした正規就職への忌避感の程度にはグラデーションがある。たとえば、実際に正規就職したサトシは次のように語った。

――周りの先輩ってほとんどフリーター?

サトシ:大学卒業してる方で、(バンド活動に)一生懸命、精力的な方はほぼ。就職してたとしても工場とか、そんなに残業とかもない。仕事に対してそんなに欲がなくて、バンドのために仕事をやる人が多いですね。