マサ:そうですね。先生もそうだし、世間一般的な人たち。もともと僕が、地元が田舎っていうのもあって、やっぱり就職する流れが、みんなするんですよ。みんなしてることしたら普遍的っていうか、普遍的な幸せを求める人ばっかりだったんで、外れたことする人を批判する傾向にあったんですね。それも肌でずっと感じてて。そいつらを見返してやるっていう。でもお前らと一緒で、別に社会でもやっていけるけどっていうのを、みんなにみせたかった。

「ゼミの先生」だけでなく、「世間一般的な」「普遍的な幸せを求める人」にとって、就職せずに夢を追おうとするマサは、批判の対象であった。それを彼は「肌でずっと感じて」いた。こうした中で彼がとった行動は、就職活動をして内定を取ることだった。「お前らと一緒」だということを証明するためである。内定獲得後すぐに辞退して、結局はフリーターとなって夢を追い始めている。

バンドマンが抱く
正規就職への忌避感

 このように、バンドマンたちは、さまざまな他者から明示的にも暗示的にも、標準的ライフコースをたどるよう勧められ、特に正規就職せずに夢を追うことに対して否定的な反応を受けていた。ところがバンドマン側からしてみれば、この正規就職こそが批判の矛先になっている。

――就活どうしようかなとかは?

ハルマ:僕とシンジは、本当にもう、そういう就職関係っていうのは考えたくないところがあって。だからこそ、大学で特技か何か、もっとね、自分たちの将来に希望を持てるようなところまで持っていかんとねっていうのがある。ねえ、もうようわからんじゃん、就職。

シンジ:就職だけはしたくねえなって思ってる。バンドがもしダメだとしても。

――どういうイメージなの、就職するって?

シンジ:なんか就職活動自体がもう俺は気持ち悪いなって思ってて。リクルートスーツで。

ハルマ:ロボットみたい。

シンジ:そうそう。リクルートスーツで、髪整えて、みんな同じ格好してっていう。あそこの一員になりたくねえなっていうのは、すげえある。

ハルマ:デジタル人間みたいな格好。

シンジ:そうそう。

ハルマ:決まりきった管理社会で生きとるイメージが。