若々しいシニア女性写真はイメージです Photo:PIXTA

ここ数年、高齢女性の一人暮らしや慎ましくも豊かなライフスタイルを綴った本が注目を集めている。人生100年時代、老いてもなお人生を生き生きと楽しむためにはどうすればいいのか。元アナウンサーで現在87歳の下重暁子が「自分で自分を楽しませる」ための秘訣を綴る。本稿は、下重暁子『結婚しても一人』(光文社新書)の一部を抜粋・編集したものです。

「一人の時間」を
1日15分持とう

 高齢女性の「一人暮らし」本がブームだという。

『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(多良美智子著)に『89歳、ひとり暮らし。お金がなくても幸せな日々の作り方』(大崎博子著)、『102歳、一人暮らし。 哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』(石井哲代、中国新聞社著)など、書店には、元気に一人暮らしをしている方々の本がずらりと並ぶ。

 これらの本の著者たちは、配偶者に先立たれて一人暮らしをしている人もいれば、 離婚して一人暮らしをしている人、子どもや孫はいるが自分の希望で別々に暮らしている人など、家族関係や背景はさまざまだ。ただ、一人暮らしをしている点が共通している。

 結婚していてもしていなくても、子どもがいてもいなくても、最後は一人暮らしになる人は多い。明るく元気に一人暮らしをしている人の生活ぶりや人生哲学から、何かしらヒントを得たいと思う人が多いのだろう。

 私はいまのところ二人暮らしだが、もともと孤独を好む上に、家庭内別居をしている状態なので、一人の時間が多い。

「一人の時間」を持つことは、家族と生活をする人にとっても大切である。

 一人の時間を持つことで自分を見つめ直し、自分について考えることができる。

 といっても、子どもがいる、仕事がある、介護が必要な家族がいるなど、人それぞれ事情はあるだろう。そういう人には、一日15分だけでも「一人の時間」を持つことを勧めたい。

 この時間はテレビを消して、本も開かず、家事もしてはいけない。自分と向き合う一人の時間が、自分を掘り、自分の個を育てることになるのだから。

 将来の一人暮らしに備えるならば、単独行動に慣れること、そして一人でできる趣味を見つけておくのがよいだろう。

 私は若いころから単独行動ばかりだ。買い物は基本的に一人で行き、つれあいの服を買っておく、などということはしない。夫や子どものものを買う女性は多いが、小さい子どもの間はともかく、自分のものは自分で選ぶのがいい。それが自分勝手に生きるということだ。

 最近の若者は性別問わず、おひとりさまを好むようだが、中高年の女性は慣れていないからか、“つるむ”のが好きだ。デパートに家族と行き、喫茶店で友人とお喋りするのが日課になっている人も多い。

「一人で映画館に行けない」
「一人でレストランに入れない」

 という人はいるが、それはやったことがないから不安に感じるだけで、少し勇気を出してやってみると、その心地よさに気づくだろう。そもそも周囲は、あなたが一人かどうかなど、気にしていない。気にしているのはあなただけだ。

 一人で行動できるようになると、行動範囲が広がるし、これまで気づかなかった景色に気づくようになる。面倒な人間関係や、無理して付き合っていた友人を断ち切ることもできる。

 一人を楽しむことができれば、配偶者の存在など、それほど気にならなくなっていく。それでいいと思う。