シニアになったからといって「このあたりで十分」と思うと、毎日がつまらなくなってしまう。これからの人生をもっと楽しく生きていくには服の力を借りるのが一番。70代の現役スタイリストが、人生の山を楽しく登り続けるコツを提言する。本稿は、西ゆり子『Life Closet』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
人生の山を楽しく登り続け
登りつめたところで果てよう
何年か前に、「シニアになったら、人生という山の下り方を考えよう」という内容の本が注目されたことがありました。でも、私はそうは思いません。人生もおしゃれも、常に上を向いて歩いていきたい。年齢を顧みず、無理して険しい山に登る必要はないけれど、「このあたりで、もう十分」と、山から下りてしまうと、毎日がつまらなくなってしまうと思うのです。
とはいっても、私の場合、日々の生活のなかでそんなに大それたことをしているわけではありません。夕食を作るときに、三國シェフの動画を参考にして定番のメニューに新しいアレンジを加えたり、ベレー帽に前髪をすべて入れて、いつもとは違うかぶり方をしてみたりとか。些細なことでも、新しい試みにトライしてみると楽しいし、一日があっという間に過ぎていく。それが私にとって「山を登る」ことなんですね。
もちろん、この先の人生にまったく不安がないわけではありません。とはいえ、やみくもに老後の心配をしたり、嫌なことが起こらないようにビクビクしていると、その不安が現実になる可能性がかえって大きくなってしまうような気がします。そして、どの道起きることならば、前もってあれこれ心配するよりも、起きたときにどう対処するかを考えたほうが悩んでいる時間も短くて済むんじゃないのかなって。
人生の山を楽しく登り続けて、登りつめたところで果てればいい。そんな生き方が、私にはきっと似合っているのでしょう。
年をとればとるほど
素直であるべき
60代も半ばになった頃、以前、とてもおしゃれなファッション誌を作っていた編集長から連絡がありました。その彼も私とほぼ同年代。いったんリタイアしたけれど、「一緒に、またなにか新しいことを始めたいんだよね」ということで、私を含め、かつて彼と仕事をしていた才能あふれるスタッフたちが集まったのです。
ところが、話が一向に進みません。せっかくだれかが面白いアイディアを出しても、「ああ、そんなことは知ってる」と知らん顔。「今どきの、こういうやり方はどうだろう?」と提案しても、「いや、俺たちの時代にそんなやり方はあり得なかった」と受け入れない。